徳島県三好市の秘境・祖谷に伝わる逸話|『平家物語』には続きがあった?Part3

2022.11.30

特集

源平の内乱や平家一族の盛衰が描かれた『平家物語』。800年以上の時を経た今でも忘れ去られることはなく、その生き様をモデルに近年では大河ドラマ『鎌倉殿の13人』やTVアニメなども制作されている。

『平家物語』の後半では、数え年で8歳の安徳天皇が祖母と入水する場面が描かれ、悲劇的な最期を迎えた天皇として記憶している人も多いだろう。

しかし、徳島県の三好市では「実は安徳天皇が生き延びていた」という逸話が残っているのだ。今回は「もうひとつの平家物語」が語り継がれる徳島の秘境を訪ねた。

【前回までの記事はこちら】
>>徳島県三好市の秘境・祖谷に伝わる逸話|『平家物語』には続きがあった?Part1
>>徳島県三好市の秘境・祖谷に伝わる逸話|『平家物語』には続きがあった?Part2

古くから歌い継がれる「粉ひき節」 名物祖谷そばのそば打ち体験

そうこうする間に昼飯時になったので、そば打ち体験ができる「祖谷自慢そば 都築」を訪ねた。
祖谷そばは祖谷地域に伝わる郷土料理だが、この地にそばの実を持ち込んだのは平家だと伝わっている。

せっかくなので、そば打ち体験に参加してみた。祖谷そばはつなぎを使わない十割りだが、想像していたよりも簡単にこねられる。そば打ちを教えてくれた都築麗子さんの丁寧な指導もあり、初心者の割にはそばの形になったのではないか。

そば打ち体験後は、その場で茹でて味わうことも可能だ。鹿肉やこんにゃくの唐揚げ、山菜の天ぷらなども一緒に供されるため、心ゆくまで地の食を堪能できる。

初めて食す祖谷そばの味わいは、そば自体の香りが鼻に抜け、喉ごしも良い。
あまりの美味さに夢中になって食していると、都築さんが『粉ひき節』という民謡を歌ってくれた。

嫁じゃ嫁じゃと 嫁のなしょたてな~よ

かわい我が子もう 人の嫁よ

サア ヨイヨイ ヨ

 

イヤと言わずに また来て たもれよ

手打ちそばなと しんぜやすよ

サア ヨイヨイ ヨ

(一部抜粋)

古来、祖谷そばを挽くのは女性の役割だったそうだが、石臼を使ってそばの実を粉にするのは重労働だ。
そんな中、少しでも気を紛らわせるために歌い継がれたのが粉ひき節だという。

「イヤと言わずに また来て たもれよ」で“祖谷”と“イヤ”をかけるなど、洒落をきかせた詞が随所に見られる。ただ単純に労働の辛さを紛らわせるためのものではなく、「大変だけれども作業を楽しみたい」という前向きな気持ちが現れているような気がして、山深い地で暮らす人々の強さを垣間見た。

本来は石臼で挽く際に唄われるが、ぜひ祖谷そばとともに味わってもらいたい。

【詳細情報】
祖谷自慢そば 都築
https://miyoshi-city.jp/spot/古式そば打ち体験塾
住所:徳島県三好市東祖谷若林84-1
TEL:0883-88-5625
HP】【facebook

【関連記事】
>>三好人の元気の秘密に迫る~ガストロノミープロジェクトアンバサダー・大桃美代子さんの秘境探訪 Vol.3

平家の落人伝説が伝わる徳島祖谷地方 子孫の暮らしが残る「平家屋敷」

今なお平家の暮らしを窺い知れるのが平家屋敷だ。「阿佐家」「木村家」「旧喜多家」と代表的なスポットがあるのだが、それぞれの特徴を紹介しよう。

まず、阿佐家住宅は平国盛の子孫が暮らした家屋で、県の指定有形文化財に登録されている。
主屋が建てられたのは1862年だと考えられており、建物は時代に合わせて少しずつ整えられ、現在の形になった。

保存修理の工事が行われたが、当時の趣を残して囲炉裏や炊事場といった生活の様子を見学することが可能だ。

【詳細情報】
阿佐家住宅
https://miyoshi-city.jp/spot/阿佐家住宅
住所:徳島県三好市東祖谷阿佐244
料金:無料

国の重要文化財に指定されている木村家住宅は、江戸時代中期の1699年に建立され、祖谷地域に現存する最古の民家だと考えられている。

寄棟造りの茅葺き屋根は軒下まで続いており、ひさしが付いていないのが特徴的。また、建物が隠居屋と主屋、納屋と並ぶ様は、祖谷地方でよく見られる屋敷構えである。

【詳細情報】
木村家住宅
https://miyoshi-city.jp/spot/木村家住宅
住所:徳島県三好市東祖谷釣井107
料金:無料
※個人所有の住宅なので、見学の際は敷地内のカフェ「古民家喫茶きむら」を利用してから申し出よう
HP

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>>囲炉裏のある暮らし (Part-3)

最後に紹介する旧喜多家住宅は、祖谷にある武家屋敷の中でも最大規模を誇る。平家の末裔である喜多家は祖谷の名主であったため、外観・内観ともに上層階級を思わせる立派な佇まいが特徴だ。

なお、旧喜多家住宅は200年以上も前に建てられたが、現存しているのは1990年に移築し修復されたものである。

【詳細情報】
旧喜多家住宅
https://miyoshi-city.jp/spot/武家屋敷旧喜多家
住所:徳島県三好市東祖谷大枝43
料金:大人310円、子ども100円

【関連記事】
>>武家屋敷 旧喜多家 パート1 秘境祖谷で最も大きい屋敷を訪ねる

引き続き、part4では平家物語に想いを馳せ、日本の原風景の中に入り込む体験が出来る平家屋敷民俗資料館をご紹介しよう。
>>徳島県三好市の秘境・祖谷に伝わる逸話|『平家物語』には続きがあった?Part4

編集:男の隠れ家デジタル 文:菅堅太 撮影:井野友樹

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オススメ観光情報

  • 落合集落(国選定重要伝統的建造物群保存地区)

    落合集落は、東祖谷のほぼ中央、祖谷川と落合川の合流点より山の斜面にそって広がる集落である。集落の起源は明らかになっていないが、平家の落人伝説や開拓伝承などが祖谷地方には残っている。集落内の高低差は約390mにも及び急傾斜地に集落を形成している。
    江戸中期から昭和初期に建てられた民家や、一つひとつ積み上げた石垣と畑などの光景は、なつかしい山村の原風景を醸し出している。
    平成17年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。

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  • 篪庵(ちいおり)トラスト

    17年程空き家になっていた(築300年)古民家を東洋文化研究者のアレックス・カー氏がリノベーションしました。
    何度も修復を重ね、今でわ世界中から数多くの観光客が訪れるスポットとなっています。

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  • 栗枝商店

    栗枝商店では豆腐やこんにゃくなどを販売しています。
    岩のように固いと言われる、大きくて固い豆腐が人気です。
    (売り切れ次第閉店となります。)

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