タフティングマットは新境地へ 「三好敷物(MIYOSHI RUG)」の伝統工芸×アート Part.2
2022.07.15
四国の徳島県三好市内に工場を構えて50年という「三好敷物(MIYOSHI RUG)」。「フッキング」という製法で一点一点作られたラグマットがSNSなどを通じて話題を呼んでいる。まるでアート作品のようなラグを手がけているのは20代、30代の若者たちだという。歴史ある工場と若い感性が出会い、紡がれはじめたストーリーを追う特集第二弾。今回は、今春から「三好敷物」でキャリアをスタートさせた2名のインタビューをお届けする。
【前回の記事はこちら】
>>タフティングマットは新境地へ 「三好敷物(MIYOSHI RUG)」の伝統工芸×アート Part.1
「自然が生み出すパワフルな“造形”をタフティングマットで再現したい」休日も自分の技術を磨き続ける永井さん
土曜日の午後、休みの日だが工場からは「タフティングガン」を操作する音が漏れ聞こえる。土曜日は業務ではなく個々の作品の制作に充てる日で、技術を磨くための貴重な時間だ。大きな布地に向かっているのは永井幹人さん。「三好敷物」に就職するきっかけ、三好での暮らしや今後の展望について伺った。
-「三好敷物」に就職したきっかけとは?
「美大出身ではなくて大学では社会学を学んでいました。ただ、ラグやインテリアが好きで。学んでいたこととは分野が違いますが、せっかく働くのであれば“面白い”と思う仕事に就けたら一番理想かなと思ってたんです。『三好敷物』はインスタグラムで見つけたんですよね。ラグの写真がバーっと載っていて、こういうの自分でも作りたいなと。それで、ここで働きたいと思ってメールを送りました。社長と話す機会をいただいて、まずは東京にある『tufting studio KEKE』で一年間働かせてもらったんです」
-現在の仕事内容について教えてください。
「平日は会社がオーダーを受けた業務を担当しています。終業後だったり土曜日はここを好きに使わせてもらっているので、その自由な時間で自分の作品をつくってます。毎日仕事をしていると知らない技法が沢山出てきて。その技術を自分がつくるものに試してます」
-この春から三好に完全移住。抵抗はありましたか?
「去年の夏の終わりに一週間くらいこっちに来たんですよ。その時にこの街や工場の雰囲気を掴むことができましたね。僕より先に働いてる人もいたんで、意外とすんなり。こんな感じで生活してるんやなーみたいなんが伝わったんで。とりあえず行ってみるのはアリだなと思いました」
個性豊かな仲間と恵まれた自然環境 三好はインスピレーションの宝庫
-三好での生活が作品づくりに影響を与えることはありますか。
「仲間たちとのコミュニケーションから影響を受けることが多いですね。『こういうものをつくりたい』とか、色んな人と話して。『ここはこうしたらいいんじゃない?』とか、自分だけでは思いつかない視点からのアドバイスをもらうこともあります。みんな個性がある人たちなんで。こういう意見が聞けるというのは少人数だからこそというか。ご飯を食べている時も作品の話ばかりです(笑)」
-次はどんな作品に挑戦しますか?
「工場の仲間と同じくらい、自然もインスピレーションを与えてくれてるんです。三好って自然が”強い!”って感じじゃないですか。山の植物や生物だったり川の石だったり、自然の生み出すものに圧倒的な存在感がある。次は、河原で見つけた面白い石をリアルに再現したラグをつくりたいとイメージしてます。いくつも並べたら絵になるかなと」
ゴールデンウィークに仕事で帰京した際には「早く徳島に帰りたい」とさえ思ったという永井さん。「毎日の仕事に手を抜かずに向き合って、タフティングの技術をどんどん自分のものにしたい」という。三好の自然をダイレクトに感じ、それをどのような作品に表現していくのか楽しみだ。
「師匠たちから技術を受け継いで、ラグで“空間表現”を」美大を卒業後三好で夢を追う大島さん
小柄ながら慣れた様子で「タフティングガン」を操る姿が何とも格好良い大島菜々さん。彼女も今年の春からキャリアをスタートしたそうだが、3月までは横浜の美術大学に通っていた。ラグを学ぶ授業を日本で唯一受けられる大学なのだという。大学卒業後すぐに「三好敷物」へ就職したわけだが、この場所を選んだ理由とは?
-「三好敷物」に就職したきっかけとは?
「実家が左官屋さんなんです。卒業したら私も左官屋さんになろうと考えてました。でも、歳をとっても体力的に続けていけるのかなって。元々職人になりたいと思っていたので大学の教授に相談しました。『職人になりたいんです! どこか紹介してください』って。教授が社長と交流があったというご縁があって紹介していただきました」
-勤務地が徳島ということは知っていた?
「初めて社長に会った時、『雇う、雇わないの前に就職するとしたら勤務地は徳島の工場です』って言われました。生まれも育ちも神奈川県で、大阪より西にはほとんど行ったことが無かったんです。去年の9月に初めてこちらに来たんですが、自分が住んでいた街より田舎で……正直驚きました(笑)。でも、好きなことを仕事にできるんだったらいいかなと思って。覚悟しました」
-業務と並行して自分の作品づくりも出来るそうですが?
「就業時間以外は自分の作品をつくってOKなんです。ありがたいですよね。大学時代に織り物も学んでいたので、次はそれをラグにしようかなと考えてます。織り物って縦糸と横糸を交互に織り込んでいくんですけど、ラグでは縦に打って横に打って……。違う技法で織り物をつくったら面白いかなと思って。実家にある作品を取り寄せているところなんです」
大歩危で開催されたワークショップ 自分で作った作品が売れた時の喜びは本当に大きかった
-自分の作品をどのように発表していますか。
「イベントに出展する時に並べさせてもらうこともあります。この間、大歩危で開いたワークショップにも自分の作品を出したんですけど、目の前で自分の作品が売れて嬉しかったですね。会社が許可してくれるので個人的に依頼を受けることもあって、友だちがやっているアパレルブランドとコラボしようか? なんて話をしたり。作家として仕事するって本当に大変で、燃え尽きてしまうこともあると思います。でも、ここでは製作時間も設けてくれて、やる気が持続しますよね」
-今後の展望について教えてください。
「元々工場で働いていた皆さんが熱心に指導してくれるんです。古い機械を使う時に『こうやって打つんだよ』『こうしたらうまくいくよ』ってちょくちょく見に来てくれるので、もっともっと技術を身につけたいですね。あとは空間表現をやりたい。ラグで表現した空間を見て『楽しいな』って思ってもらえればいいかなって思ってて。展示をするのが夢です」
実は、移住後に水が合わなくて苦労したという大島さん。「多分、徳島の水がきれいだからだと思います。体が水に慣れる頃にはもっと上手になっていたい」と前向きだ。夏になれば愛車のジムニーを駆って四国中を巡りたいという。学生時代に培った感性に新境地での体験が加わった時、どんな作品が生まれるのだろう。
伝統工芸を現代的な解釈で世の中へ届ける若者たち
タフティングの技術を磨くため日々邁進する永井さんと大島さん。二人ともが「やりたいことを仕事にできる喜び」を語ってくれた。次回はSNSを通じて「三好敷物」の一員となった西尾日花里さんのインタビューとともに、「三好敷物」の“これから”についてお届けする。
MIYOSHI RUGー三好敷物ー
Website: https://miyoshirug.com/information/
Instagram:https://www.instagram.com/miyoshirug/
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>>タフティングマットは新境地へ 「三好敷物(MIYOSHI RUG)」の伝統工芸×アート Part.3
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賢見神社
海抜400mの大渡峯に位置し、仁賢天皇の御鎮守である。
精神病、ものの気(け)つき・五穀豊穣・海上安全の守り神であり、県内外に多くの信者をもつ。 -
めん処阿波
2021年創業の打ち立ての蕎麦が食べられるお店。日替わり定食に人気があり、また蕎麦の麺を購入することもできる。
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農家民宿祖谷八景
1日1組(最大8名まで可能)限定で、築350年の古民家宿に宿泊出来ます。
また囲炉裏のある居間でゆったりくつろぐ事が出来、贅沢なひと時を体験頂けます。
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