タフティングマットは新境地へ 「三好敷物(MIYOSHI RUG)」の伝統工芸×アート Part.3

2022.07.20

特集

四国の徳島県三好市内に工場を構えて50年という「三好敷物(MIYOSHI RUG)」。「フッキング」という製法で一点一点作られたラグマットがSNSなどを通じて話題を呼んでいる。まるでアート作品のようなラグを手がけているのは20代、30代の若者たちだという。歴史ある工場と若い感性が出会い、紡がれはじめたストーリーを追う特集の最終回。SNSを通じて「三好敷物」の一員となった西尾日花里さんのインタビューとともに、「三好敷物」の“これから”についてお届けする。

【前回の記事はこちら】
>>タフティングマットは新境地へ 「三好敷物(MIYOSHI RUG)」の伝統工芸×アート Part.1
>>タフティングマットは新境地へ 「三好敷物(MIYOSHI RUG)」の伝統工芸×アート Part.2

「三好敷物で磨いた技術を、いつか海外で」日本国内だけでなく世界で活動したいと語る西尾さん

前回の記事で話を伺った永井さん、大島さんとともに制作に精を出していた西尾日花里さん。満点の笑顔と明るいヘアスタイルが印象的な彼女もまた「三好敷物」の新入社員だ。出身は九州・福岡。就職活動で一般企業にエントリーしていたそうだが、「自分の感性を生かしたモノをつくりたい」という想いが勝り入社に至ったという。

-もともとクリエイティブな職業に興味があったのですか?

「そういうわけでもないんです。ただ、『何か自分の“モノ”をつくりたい』という気持ちだけはあって。とにかく人と違うことがしたいと思ってましたね。就職活動で一般企業も受けていたんですが、『何か違うな』と漠然と思っていました」

春から入社と共に徳島県三好市に移住。豊かな自然、仲間に囲まれた暮らし

-そんな時に『三好敷物』に出会ったわけですね。

「就活中にインスタで『三好敷物』の動画を見つけたんですよ。めっちゃ楽しそう!と思って、国内でできる所を探したたらここしかなかったんです。見学できるかを問い合わせたらOKということだったんでお邪魔して。その時に履歴書を渡して『働きたいです』とお願いしました。いわゆる“就活”はやめちゃいましたね(笑)。その後、面接をしていただいたんです。晴れて今年の春から入社ということになりました」

-徳島での暮らしはどうですか?

「都会に住みたいっていう気持ちもありましたけど、やっぱり疲れてしまうんで自然いっぱいな土地の方が自分には合ってると思いますね。地元から車も持って来たので移動に苦労しないですし、山も見えるし、どこに行ってもきれいな景色を見れますし。同世代の仲間もいるんで寂しいと感じることもないですよ」

「技術の向上が今一番楽しい」ベテラン職人との交流も醍醐味 アーティストとのコラボも手がける

-仕事をしていて「一番楽しい」と感じることは?

「全部楽しいです! けど、難しいデザインは楽しいけど楽しくない(笑)。細かいデザインってめちゃくちゃ難しいんですよ。輪郭をくっきり出すにはきちんと打たないといけない。うまく出来ないと『楽しくないな』って思っちゃうんですけど、難しい技術でもコツを掴むことができると一気に楽しくなります。技術の向上を感じることが今一番楽しい。最近手掛けたのはアーティストのshiomiwadaさんとのコラボラグ(写真上)。アーティストの方々とのコラボでインスピレーションをもらうこともありますね。それと、技術的に難しいことが出てきたらベテランの職人さんに教えてもらえるのも助かります。こういうイメージのラグをつくりたいってよく相談してますね」

-今後つくりたい作品について教えてください。

「“THE 日本”みたいな、和テイストのラグをつくりたいと思ってます。景色だったり寺社仏閣だったり、日本の良いところを作品にして海外の方に使ってもらいたいですね。いずれ大きい作品もつくりたいんですけど、まずは小さいサイズから挑戦するつもりです。この色とこの色を組み合わせるとどう見えるか? とか、色の勉強も欠かせないですね。感性を磨いていきたい。いつか海外で働きたいんですよ。ラグそのものは海外発祥ですし、日本人の私がやっていけるか不安はありますけど。今は、全力で今やるべきことをやる! が信条です」

個人的に「Sachi’s Kitchen」のアートワークに携わるなどの活動も行う西尾さん。作品が増えたら個展を開いたり、自分のショプもつくりたいのだという。「いろいろ壁がありそうなので、まだまだなんですけど」とは言うものの、日々の研鑽が良い結果を生んでくれることだろう。徳島・三好から海外へ。彼女の作品が羽ばたいていくことが楽しみだ。

『三好敷物』が新たな観光資源になる未来を描く

ワークショップを行ったりと地元のイベントへも積極的に参加する『三好敷物』。工場の引き継ぎ時に第一陣として三好へやって来た市川さんは「せっかくここで事業をやらせてもらうからには何かしら地元に還元したい」と語る。その反面、マンパワー不足などにも悩まされているという。「チャレンジしたいことはたくさんありますが、どうしても追いつかない部分もありますね」(市川)。

SNSを通じ全国区となりつつある『三好敷物』を三好の新しい観光資源として活用できないかと模索中だ。「工場見学だったり工場でのワークショップ開催も今後やっていきたいんですけど、建物自体とても古いので手を入れないと難しいかもしれませんんね」(市川)。『三好敷物』のラグを「ふるさと納税」の返礼品に、というアイデアも持っているそうだ。「三好市のふるさと納税返礼品は食品が多いようなので、ラグを通じて三好の伝統工芸について知っていただく機会になると思うんです」(市川)。

三好で育まれてきたタフティングの伝統技術を次世代へ

現在従業員数8名。その半数は20代で、皆「ここで働きたい」という想いを携えて集ってきた。『三好敷物』は歴史ある工場で培われたタフティングの技術を次世代へ繋いでいく受け皿となっているのだ。伝統工芸という側面で三好の魅力を発信する“古くて新しい”工場の、次なる一歩に期待したい。

 

MIYOSHI RUGー三好敷物ー

Website: https://miyoshirug.com/information/
Instagram:https://www.instagram.com/miyoshirug/

 

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