かかしの母 綾野月美さん パート2 「かかし工房」「かかしの学校」を訪ねて
2022.08.01
徳島県三好市、秘境祖谷の名頃集落では350体を越えるかかし達が、いたるところでユーモラスな姿で迎えてくれる。近年は多くの人々も訪れる観光の人気スポットともなっている。そんな、かかしたちの生みの親、そして祖谷の住人として様々な活動を行う、かかし作家の綾野さんを紹介する。
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>>かかしの母 綾野月美さん パート1 三好市東祖谷名頃「かかしの里」
かかしがお出迎え 徳島県三好市、奥祖谷名頃集落 癒しの観光スポット
「かかしの里バス停」から、道路を歩いて「かかし工房」へ向かう。
途中の道沿いの建物にも個性あふれるかかしたちが、窓からのぞいたり、自転車に乗ったりして、楽しそうに過ごしている。
老若男女があちらこちらで集まっておしゃべりしていたり、楽しそうに孫の世話をするおじいちゃん、おばあちゃん、すました表情のおしゃれな若者もいる。かかし通りの賑わい。本当に、かかしの住人の暮らしを覗いているようだ。
過疎化の進む地域で、大きな予算を投じられた観光施設でもない、個人がコツコツと行う活動が、今、一番の観光の目玉ともなっているのは、注目に値する。
思い出がよみがえる、かかしとの出会い
元幼稚園だった「かかし工房」に着くと、入口には、綾野さんの一番のお気に入りだという、子供を背負ったおばあちゃんがいる。
中に入ってはじめに目にとまるのは、床でお昼寝しているおばあちゃんだ。随分リアルで、思わず声をかけそうになる。このかかしも人気で、一緒にお昼寝のポーズで写真を撮る人も多いのだとか。
奥には着物姿のかかしが並ぶ。大人は紋付、子供のかかしも、めいめい綺麗な着物を着ている。この、今では作られていない質や柄の着物に、「子供の頃、私もこんな柄の着物を着せてもらっていた」と、昔のことを懐かしく思い出す方もいるそうだ。
秘境のかかしの生まれる場所「かかし工房」 かかしづくりワークショップには海外からの参加者も
そして、中央のテーブルが、かかしが制作される場所。まわりにはたくさんの服や新聞紙といった材料がたくさんある。
ここで綾野さんと地元の友人などが集まって、かかしづくりを行う。また、ワークショップもあり、訪問者もかかしづくりを行うことができる。
海外からの旅行者でも、一週間ほど祖谷のホテルに泊まり、毎日ここへ通い、かかしを作った方もいたそうだ。綾野さんは、その方とは今でもラインでやりとりを続けている。「こういう出会いもあるから楽しい」と嬉しそうに話してくれる。
「かかしの学校」名頃集落の思い出と共に
続いて「かかし工房」から橋を渡って、「名頃小学校」へ向かう。この橋のかかる、祖谷川の上流には名頃ダムがある。
名頃集落は、ダムの建設で大きくなった集落だ。綾野さんが小学生だったころは、地元の住民150名、そしてダムに関わる労働者150名で、300名を超える人口があり、旅館や商店のほか、散髪屋やパチンコ屋まであって、とても賑わっていたそうだ。
現在は人口26名。かかしは350名。残念ながら、過疎化とともに人は減ってしまったが、かかしは新しい住人として、集落を活気づけている。
綾野さんは、廃校だった名頃小学校へ案内してくれた。今では、ここもかかしでいっぱいの、かかしの学校。かかしの生徒達が集まっている。スーツを着たかかしの先生も生徒たちを見守っているいる。
体育館に入ると、そこにでは、祭りが開催されていた。数えられないほどの多くのかかし達に迎えてもらった。手前では綱引きや玉入れ、運動会の様子。奥のステージではウエディングドレス姿のかかしを中央に、かかしの結婚式だ。
中央では大勢が阿波踊りをしている。「かかし連」といった様相で、様々な年代のかかし達がユーモラスに踊っている。
徳島といえば阿波踊り! かかし達の祭りに参加する
ちょうちんが吊り下げられ、綾野さんが阿波踊りの音楽を流してくれると、お祭りの雰囲気が盛り上がった。「わたしはできない」と言いながらも綾野さんは、かかしに混じって、阿波踊りを披露してくれた。たまたまその場にいた観光客も楽しそうに綾野さんの踊りの手をまねて動かしていた。
例年は10月に、この名頃小学校で「かかしまつり」がある。教室で勉強するかかしの生徒の授業参観ができたり、かかしの行列や写真コンテストがあったりする。
外のグラウンドでもかかし達に混じって行う様々なイベントがあったり、郷土食の出店があったりと、地元の人も楽しみにしている、手作りの祭りだ。笑い声が絶えず、本当に楽しいので、再開された時は、ぜひ参加してみて欲しい。
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>>かかしの母 綾野月美さん パート3 四季折々の奥祖谷の暮らし
かかしの里
入場無料 年中無休
https://miyoshi-tourism.jp/spot/kakashinosato/
(取材・文・写真: ショーン ラムジー)
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落合集落(国選定重要伝統的建造物群保存地区)
落合集落は、東祖谷のほぼ中央、祖谷川と落合川の合流点より山の斜面にそって広がる集落である。集落の起源は明らかになっていないが、平家の落人伝説や開拓伝承などが祖谷地方には残っている。集落内の高低差は約390mにも及び急傾斜地に集落を形成している。
江戸中期から昭和初期に建てられた民家や、一つひとつ積み上げた石垣と畑などの光景は、なつかしい山村の原風景を醸し出している。
平成17年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。 -
武家屋敷旧喜多家
宝暦13年(約250年前)に建てられた祖谷地方でも最も大きな武家屋敷。屋島の戦に敗れた平氏一族が落ちのびてきた東祖谷山村大枝地区は、平家縁の地である。
この平家の里の名主であった「喜多家」は、祖谷の上層階級の武家屋敷である。庭先には「鉾杉」もあり一見の価値有り。 -
民宿 平家の宿
国産地元のそば粉100%使用した本格手打ちそばが食べられます。
つなぎを使わず切れやすいのが特徴です。
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