かかしの母 綾野月美さん パート3 四季折々の奥祖谷の暮らし
2022.08.08
徳島県三好市、秘境祖谷の名頃集落では350体を越えるかかし達が、いたるところでユーモラスな姿で迎えてくれる。近年は多くの人々も訪れる観光の人気スポットともなっている。そんな、かかしたちの生みの親、そして祖谷の住人として様々な活動を行う、かかし作家の綾野さんを紹介する。
【前回までの記事はこちら】
>>かかしの母 綾野月美さん パート1 三好市東祖谷名頃「かかしの里」
>>かかしの母 綾野月美さん パート2 「かかし工房」「かかしの学校」を訪ねて
春はごうしいも、秋はそば…祖谷の伝統的農業を見守るかかし達
かかし達の働く畑で、綾野さんは祖谷の住人として、様々な作物を育てている。春から夏はジャガイモ。もちろん、祖谷のいもも育てている。
ジャガイモの収穫が終わると、夏には、そば蒔き。秋の収穫後は、畑のそばの「ハデ」という乾燥用の竿に干す。
その間も、かかし達はユーモラスな表情で佇んいる。
そして、昨年、秋の収穫後、作物がない時期は、なんと、ミレーの「落穂拾い」と「晩鐘」の祈りの様子が、かかしで再現されていた。
かかしのお母さんである綾野さんは、祖谷の暮らしを楽しみ、楽しませる達人でもある。
「かかし教室」日本全国で、地域おこしのお手伝い 広がるかかしの里ブーム
かかしづくりも、綾野さんは祖谷だけではなく、さまざまなところで教室を開いている。以前は、徳島市内の教室や展覧会など定期的に随分長く行っていたそうだ。現在は、各地から講師の依頼があって、日本全国を飛び回って教えている。
そこから、綾野さんの生徒さんが、かかしでまちおこし活動などを行い、かかしの里ブームは、今、日本中に広がっている。
四国、秘境の陶芸釜から生まれる作品 陶芸教室も人気
そして、陶芸。綾野さんは、大阪で9年ほど本格的に学んできたという。祖谷に戻ってから、この陶芸の釜を購入したそうだ。
今では、ご自分で制作するだけでなく、教室も開いている。この取材の前日には、地元小学校の生徒達の教室がここで行われたそうで、子供たちの作ったかわいらしい作品が乾燥中だった。
綾野さんの作品も、あちらこちらに並んでいる。綾野さんは、沖縄のシーサーが好きで、それをアレンジしたものがたくさんある。やはり、個性のあるユーモラスな顔で、古いものは苔むして、ここの守り神として鎮座している。
小さな鬼やお皿、箸置きなどは、海外の観光客に人気なお土産だそうだ。祖谷の温かい手作りの焼き物は、ここでしか販売していない。
かかしの母の創作活動 祖谷の厳しい冬をも楽しむ
さらに、かかしづくりの前に行っていたという、お人形づくりについてもたずねてみた。
主に、冬にいるというお部屋にお邪魔する。
ここで冬の間、綾野さんは薪ストーブのそばに座り、せっせと手を動かしているという。人形は着物の生地で出来ており、その柄や色を合わせるのもなかなか楽しいのだとか。「かかし工房」にある、赤い「さげもん」、吊るし飾りももちろん、綾野さんの手による。準備中の、大きな袋に入ったたくさんの小さな人形も見せてくれた。全て細かいところまできれいに仕上げられている。
薪ストーブの部屋の奥には着物のかかし達の結婚式の様子。豪華な着物を着た、表情豊かなかかし達。祖谷の厳しい冬の間も、体も気持ちも温まる部屋だ。
入口には、綾野さん曰く「男前」の侍も制作中。どんな衣装になるかも楽しみだ。
何度でも訪れたくなる かかしの里
かかしの里は、来るたびに常に違った表情を見せる。一度来た人も、新入りのかかし達に会いに何度も訪れてほしい。
綾野さんも、かかしに混じって農作業をしていることも多く、挨拶すると気軽に返答してくれる。農作業などのお手伝いも歓迎だ。
かかしの里
入場無料 年中無休
https://miyoshi-tourism.jp/spot/kakashinosato/
(取材・文・写真: ショーン ラムジー)
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篪庵(ちいおり)トラスト
17年程空き家になっていた(築300年)古民家を東洋文化研究者のアレックス・カー氏がリノベーションしました。
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また、東祖谷は深奥の秘境であり、全ての始まりの地でもあったことから、独自の文化・風習・慣習が育まれました。資料館では、四季を通じた東祖谷の姿、時代の変化に伴う日常道具の変遷、生活を潤す芸術品など、村民が大切に残した時代の形をご覧ください。
2階には500名収容のホールもかねそなえています。 -
食事処やなもと
そば、うどんがメインのお店です。
天日干しした玄そばを極細碾きした粉で打ったそばと、
自家製手打ち麺でコシが強く、喉越しの良いうどんをお楽しみ下さい。
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