徳島県三好市 1100年以上の伝統ある「西祖谷の神代踊」がユネスコ無形文化遺産へ 保存会会長に聞く今とこれから

2022.12.21

特集

徳島県三好市西祖谷山村に伝わる「神代踊」がユネスコ無形文化遺産登録が決定されました。

2022年11月30日、徳島県三好市西祖谷山村に伝わる「神代踊」などを含む、日本各地で継承されてきた民俗芸能「風流踊」が、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録が決定されたとのニュースが報道されました。

神代踊という名称は古くは笠踊り、太鼓踊りと呼ばれており、1922年(大正21年)の皇太子(のちの昭和天皇)の訪村に際してつけられたものです。

神代踊とは 今年は3年ぶりに西祖谷の天満神社にて奉納

起源は諸説ありますが、仁和4年(888年)に菅原道真が讃岐守として在任時に、大干ばつにあたって苦しむ農民のために雨乞いの祈願を行い、各種の踊りを催し雨が降ったと言われ、その一部が伝えられて今日の神代踊の始まりとなったと考えられています。

【詳しくはこちら】
神代踊り|まるごと三好観光ポータルメディア
https://miyoshi-city.jp/spot/神代踊り/

西祖谷山村善徳の天満神社で、毎年旧暦6月25日の夏祭りに、豊作と無病息災を祈願して奉納されます。
新型コロナウイルス感染症の影響で中断していましたが、今年は3年ぶりに地元の保存会や児童によって奉納されました。

【2022年の神代踊レポートはこちら】
神代踊り 秘境に伝わる雨乞い祈願の舞い パート1 「神代の昔から」いにしえの民俗芸能

ユネスコ無形文化遺産登録に際して、西祖谷神代踊保存会会長の小野寺 武夫さんにお話しを伺いました。

小野寺さんは「登録されたからには、継承していくことが肝心です。保存と伝承が課題。今回登録が決定した他の地域でも似たような状況だろうけれど、後継者を育てていかなければ。西祖谷も過疎化が進んでいるので人が少なくなり、祭りや踊りを維持する事が困難になっている」と話してくれました。

これは多くの寺社も直面している問題です。
檀家や氏子が少なくなり、複数の神社を1人で多数兼務する宮司や、常駐する住職がおらず別の寺の僧侶が住職を兼ねているお寺は増加しています。
そうなると、仏事や神事が執り行えず廃れてしまう事も考えられます。

過疎化により自然伝承が困難に 現在では地元小学校の授業の一環として子供たちに受け継ぐ

神代踊も、元は善徳・徳善・田ノ内・上名・吾橋の地区それぞれの踊りがありましたが、限界集落を超えるような状況となり、今では天満宮神社のお膝元である善徳と徳善を残すのみです。

「昔は踊りをする人が決まっており、他の地域の人に踊ってもらう事がなかったんです」と小野寺さん。

「それぞれの家庭で受け継ぎ、自然と伝わるものでした、だからいなくなると途絶えてしまう。4~5年前は解散かもしれないという話になった事もありました」

しかし、5~6年ほど前から地元の小学校で授業の一環として踊りを教え、今年は子供達も含めて30人近くが踊りました。
子供や若い世代の方達には、今回の無形文化遺産登録は大いに励みになることでしょう。

「今の上皇さまの即位の礼の時(平成2年)や、2007年(平成19年)に国立劇場開場四十周年記念の民俗芸能公演でも踊ったんですよ」と誇らしげに教えてくれました。

「昔は今ほど娯楽がありませんでしたから、祭りや踊りに情熱を注いでいたのでしょう。年1回だからこそ、そこに向けて頑張れるし、練習でも交流が生まれる楽しみの1つだったんでしょう」

世界に誇る三好の宝として「神代踊」を踊り継ぐ 後継者の育成や保存・継承への取り組み

小野寺さんは「無形文化遺産登録で、モチベーションは上がりましたね。地元の若い世代のチームも協力を申し出てくれました。これからは次の世代を育てたり保存や継承の仕方を考えなければ。実は神代踊は12曲あって、きれいに受け継がれていないものもあります。何とか昔の映像などをお借りして、自分や保存会のメンバーの子供の頃からの記憶との確認もしたいですし、練習も必要です」とこれからについて話してくれました。

「小学校の教員の方も授業で踊っている内に神代踊が好きになって、祭りの時には来てくれています。ぜひ、来年は天満宮神社に神代踊を見に来てほしいです。山の緑に笠や衣装の色が映えて綺麗ですよ、カメラマンも大勢います」

来年も天満宮神社で、神代踊が無事に開催される事を楽しみに待ちましょう。

◆ユネスコ無形文化遺産 風流踊 パンフレット(風流踊pdf)
「西祖谷の神代踊」を含む、ユネスコ無形文化遺産登録に登録された全国 41 件の「風流踊」一覧が記載されています。

【関連リンク】
「風流踊ふりゅうおどり」のユネスコ無形文化遺産登録(代表一覧表記載)(文化庁)

(取材・文・犬山涼)

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