「引退のきっかけはつけ麺です」ーラフティング選手小泉聡が世界一を目指す理由

2022.03.22

特集

2021年11月27日~28日、徳島県三好市吉野川を舞台に「第6回全日本レースラフティング選手権大会」が開催され、2日間に及ぶ熱戦が繰り広げられた。
各カテゴリーの優勝チームは、今年5月に開催される世界選手権出場の権利を手に入れた。
オープン男子カテゴリーの優勝はラフティングチームテイケイ。今回は世界選手権への抱負とともに各選手の想いを聞いてみた。

小泉聡(こいずみさとし)選手

所属:ラフティングチームテイケイ
出身地:千葉県
生年月日:1988年2月3日
ニックネーム:さとぴー、パッション
好きな食べ物:うなぎ
嫌いな食べ物:プリン体
得意技:ケーキ作り

ラフティングとの出会いは大学時代~1年目の世界一と4年目の挫折

大学時代にラフティングと出会った小泉選手、大学4年生時には大学の講義と練習を両立しながら練習生としてチームテイケイに帯同し世界一に貢献した。大学卒業後は、そのままチームテイケイに加入、日本代表として世界選手権に出場、加入1年目にして世界一に輝いた。チーム加入4年目である2015年からはキャプテンに就任し、世界一奪還を任されることになる。順風満帆だった選手生活、経験を積み技術も向上している自信があった。しかし、キャプテンとして初めて出場した世界選手権、自分の甘さを痛感するには充分過ぎるものだった。

 

キャプテンとして初めて臨んだ世界選手権インドネシア大会総合順位は5位(写真中央)

その後も世界一には届かなかった。結果が出なければ周りからいろんな声が聞こえてくる。キャプテンとしてのリーダーシップ、選手としての在り方を自問自答する日々、次第に自分の思いと行動が一致しなくなっていった。自分の勢いがなくなって行くのを感じ、自分の気持ちを口にすることへの恐怖心さえ芽生え始めていた。

自己中心的なのは誰だ?の衝撃 ラフトボートに乗るのが、明日が来るのが、怖かった

小泉選手:「一番心に堪えたのは、チームビルディングの一環で参加した講習中にメンバーからチームの中で一番自己中心的だとレッテルを貼られたときです。みんなのためを思ってキャプテンとして最善を尽くしていたのに、なんで!? という気持ちでした。チームメンバーからの信頼が無くなっていき、疑いの目をかけられているのも感じていましたが、もうどうすることもできませんでした。ラフトボートに乗るのが怖くて練習に行くのがツラくて、明日が来るのが怖かった。そんなことを思う日々が続きました。
でも、自分はキャプテンとして練習を運営しなくてはいけない立場、それを放棄することもできない。自分の言葉に責任が無い状態でした。寝なければ明日になるのが少し遅くなる、カフェインが反応し易い体質なので、深夜にコーヒーを飲んで寝ないようにしていた時期もありました。大会が終わればこの苦しみから解放され楽になれる。という思いがめぐっていました」

複雑な思いで臨んだ、2019年世界選手権オーストラリア大会、総合成績4位で大会を終えた。帰国した夜、近所のラーメン屋でつけ麺をすすりながらあることに気がついた。いつもなら欠かさなかった帰国後の練習をしていないこと。そして、負けて帰って安心していることに。プロとしてお金を頂いている以上、全力で応えるべきだが全力で応えられそうにない、自分はもうプロじゃないと、、、自分ではなく全力で応えられる人がやればいいと引退の言葉が浮かび、選手生活の終わりを悟った。

「人は必要とされているうちに力を発揮するべきだよ」心を動かした上司の言葉

選手生活の終わりを悟った夜から、チームメンバーや周囲から選手を続けるよう説得されたが、再び競技に向き合うまでには至らなかった。結局自分の中で、ハッキリと答えは出ず会社に呼ばれた。自暴自棄になる小泉選手に会社の上司がある言葉をかける「人は必要とされているうちに力を発揮するべきだよ」この一言で気持ちが動いた。

小泉選手:「帰国後、数日経ってから自分の進退でチームの存続が大きく変わるということを知りました。そのことを知って、今後チームテイケイの存在が無くなることによる影響を考え始めていました。自分に大きな判断を委ねられていると。そんな時、上司から言葉をかけられ考えが変わりました。けれど、結局気持ちがバチッと決まることはなく、チームがなくなることを避けたいという気持ちが第一で、チームをやめるという選択肢がなくなったという感じでした」

チーム残留を決めた後、単身ブラジルへ ラフティング世界王者との交流はラフティングを見つめ直す機会に

チームに残ることを決めた小泉選手は、まずライバルチームの元へ向かった。ひとりブラジルに飛び世界王者ブラジルチームと寝食を共にし、地元の大会へも出場した。彼らのスタイルを肌で感じラフティングというスポーツへの考え方が変わっていった。

チームテイケイは世界一に向け新体制となり、冷静にラフティングを見つめ直す時間が増えたことで、一から作り上げている感が楽しく、ラフティング楽しむことを思い出していた。

 

ブラジルチームとの交流はラフティングへの考え方を変えた

自分は何が残せるのか?――ジュニアチーム結成の理由

現在の小泉選手にラフティング選手として一番を目指す意味を聞いてみた。
小泉選手:「自己実現のためとその過程を楽しんでいる。100%自分のため」というゴリゴリの自己中心的な答えが返ってきた。ありのままの気持ちを表現した「自分のため」という言葉には潔さと力強さが籠っている。メンバーから自己中心的と言われた男は、挫折を経て「自分のため」という答えにたどり着いた。そして、自分に向いていた矢印は徐々に外へ向けられるようになる。

その想いは行動として現れ、会社に頼み込んでジュニアチームの結成を実現させた。自己実現ができる環境を整え、自分だけではなく若い人にもチャンスを与えたいという想いからだった。

 

ジュニアチームの指導も行う(写真はジュニアチーム)

自分のためがみんなのために~日本のラフティングの未来を担う次世代の育成

小泉選手:「チームのミッションとして、もちろん結果を残すために頑張っている。では、個人のミッションは何だろうか?と考えたんです。長くラフティングをやらせてもらってきて何が残せるか考えたときに、モチベーションが向いたのはジュニアチームの結成でした。自分が好きなのは次世代の育成、次世代のために思いきりやれる環境を作ることだったんです。
最初、周囲に相談した時は、賛成も反対も特にありませんでしたが、許可が出たので勝手にやりました。結局、自分がやりたくてやったので自分のためなんですけどね、今はこんな風に考えています、自分のための目標を達成すれば喜んでくれる人がいる、自分のためがみんなのためになると」

小泉選手が目指す社会――自分を大事にしながら世の中に貢献できる社会

小泉選手:「大学の講義中に見た自殺者の人数に驚きました。その時、何よりも解決すべき問題ではないかと思ったんです。自分を大事にしながら世の中に貢献できる社会を目指し、周りと違うと変な目で見られる生きづらい世の中で、自分の生き方を肯定してくれる教育機関を作りたいと考えています」

個人のSNSで質問を募集している小泉選手、届く内容はラフティング関係の他にいじめや、就職に悩む人からの質問が多いようだ。自分の経験が役に立つならと丁寧に答えている。ラフティング選手としてのキャリアを積みながら理想を実現するために少しずつ行動している。挫折と復活を経験した小泉選手の活躍が楽しみだ。

最後に~世界選手権に向けて意気込み

チームを代表し抱負を語る小泉選手(写真左)

小泉選手:「優勝することしか考えていない。昔は手探りで世界一を目指していたが、今は世界一になることは決まっている前提で、大会までの時間をワクワクした気持ちで臨んで過ごせているかを大事にしている。いろんな経験を経て世界一への向かい方が変わりました。大会当日まで納得できる時間を過ごし世界一になります」

【ラフティングチームテイケイFacebook】
https://www.facebook.com/profile.php?id=100041655560391

【小泉聡選手Facebook】
https://www.facebook.com/satoshikoizumi.racerafting

 

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