地域おこしの先輩 市岡日出夫さん パート3 山の図書館ヤマガラ文庫 

2022.06.16

特集

現在の田舎暮らしブーム、そして各自治体が移住促進として様々な取り組みを行っている中、すでに30年前に秘境にUターン、地域おこし活動をしてきた人がいる。今回は、三好市東祖谷の市岡日出夫さんを紹介する。

【前回の記事はこちら】
地域おこしの先輩 市岡日出夫さん パート1 都会から秘境へUターン
地域おこしの先輩 市岡日出夫さん パート2 「てんご新聞25周年」独立!活採祖谷村

徳島県三好市 貴重な山の図書館

以前の東祖谷には図書室規模の図書館があるだけだった。そこに出来た大きな図書館の存在は住民にとって大きな意味を持っている。

もちろん祖谷には本屋もない。インターネット時代と言っても紙の媒体で読む本の良さにはかえられない方も多いだろうし、また高齢者の多い祖谷ではインターネット自体使わない住民も多数だ。 

廃校をリノベーション 日本全国、そして世界から集まる本

「祖谷にも図書館をつくろう。」市岡さんが、今は使われていない高校の建物を利用して、図書館に変えたのは5年ほど前。

地元の協力者の手も借りて、長い間使っていなかった建物の清掃をはじめ、本棚を設置し、本を並べと長い時間と多くの手間もかかった。 

ここが秘境の図書館だ。名前も祖谷でよく見る、人懐っこい鳥「ヤマガラ」から名付けられた。 

さらに、この図書館の本は全て寄付で集まっている。「てんご新聞」などで市岡さんを知る方々が、秘境の図書館の噂を聞きつけて、本を送ってくれたそうだ。中には、段ボールで何箱も何箱も多額の送料をかけて送ってくれる方々もいるそうだ。 

また以前に山ガイドでおもてなしした海外在住の方も、わざわざ日本語の新刊を探してこの図書館に送ってくれるそうだ。 

様々な方からの本の寄付は今でも続いている。 

図書館、そしてコミュニティのための場所 

この日の取材は、この図書館で行われたが、市岡さんはレコードをかけてコーヒーでもてなしてくれた。市岡さんの「職員室」には、お気に入りの本だけではなく工芸品なども並び、趣味の部屋といった様相。 

祖谷には、あまり人の集まる場所がないから、図書館以外にも何か住民が集まれるような 場所や活動もあってほしいと願っているそうだ。 

祖谷の子供達へ自然の楽しさ、すばらしさを伝えたい 「もんてきたかえ」で祖谷出身者の帰省も歓迎

市岡さんは、てんご新聞の発行や図書館の運営だけにとどまらず、木工教室や山歩きガイドなど様々な活動で指導にあたっている。地元の子供向け体験教室にはボランティア講師として参加する。 

故郷、祖谷の自然の楽しみや良さ、怖さをよく知って欲しいとの思いからだ。 

また年末には市岡さん達の手によるメートルもの長さの大凧が東祖谷の中心部にかざられる。この活動も26年になる。

大凧には干支とともに「もんてきたかえ」の言葉が毎年ある。大人になった、かつての祖谷の子供たちのお正月の帰省も歓迎している。いつになっても家族の様にあたたかく迎え入れてくれる祖谷の大凧だ。 

心を自然に繋げる活動 祖谷でしかできない体験がここにはある

祖谷の過疎化についても話してくれた。特に子供の数が減ってしまっている祖谷地域。しかし、現在の住民とこの先Uターンで帰ってくるだろう人々では、祖谷の活性化はなかなか難しいそうだ。また移住してくる人々が増えるのが理想ではあるが、祖谷地域は地理的にも過酷な自然環境のゆえにも移住者が本当に根付くのは残念ながらまれでもあるそうだ。

しかし、市岡さんは続けて言った。「それでも、この先、住んでいる人だけではなく、祖谷にやって来た人がこの美しい自然を体験できるようなことも続けていきたい。場所はあるのだから、例えば、不登校の子供たちが祖谷に滞在して、自然にふれることで心を強くできるようなそんな活動もやってみたい。祖谷なら出来る事がある。」

今、地域おこしの先輩市岡さんの目は、地域を越えて、大勢の幸せの方向を見ている。

(取材・文・写真: ショーン ラムジー)

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