雨の音しか聞こえない町・三好市池田町の“LOCAL SNACK BAR Lily”で「武藤昭平Withウエノコウジ」がアコースティックライブを開催。

雨の音しか聞こえない町・三好市池田町の“LOCAL SNACK BAR Lily”で「武藤昭平Withウエノコウジ」がアコースティックライブを開催。

三好市池田町にローカルスナックバー「Lily」がある。正式名称は”LOCAL SNACK BAR Lily”。

オープンから6年、オーナーの人柄に惹かれて馴染み客も増え、今ではボトルがズラリと並ぶ店である。

たとえば会社の先輩が後輩たちを連れて立ち寄る場所だったり、池田町の飲食店には珍しく、若者たちがふらりと顔を見せにくる場所だったりと、この店に馴染みの先輩たちが後輩たちへ社会勉強として連れて行ってくれるようなスナックバーだ。現在コロナの影響もあり席数は25席から12席に減っているが、にぎやかさは変わらず営業している。

“肩を張らずに楽しく美味しいお酒を飲んでもらいたい”ここにいるスタッフ全員が共通して思う気持ちが「Lily」の空気を作っている。

三好市は夜になれば雨の音しか聞こえないくらい静かな町。

今回そんな場所でLIVEをやる事に対してオーナーの川人さんは悩んだが、ここでやることに意味があるんだ!そんな思いで様々なルールと感染対策を考え開催に踏み切り、様々な思いの中、2月26日「武藤昭平Withウエノコウジ」のアコースティックライブが開演した。

もちろんチケットは一瞬で完売し、狭い店内はいつもと違う雰囲気が漂っている。

「武藤昭平withウエノコウジ」は2009年頃からソロとして活動していた武藤昭平さんにウエノさんが参加した事により出来たユニットだ。活動範囲はライブハウスのみならず酒場やクラブハウスでもLIVEをした事があるという、環境さえあればどこでも開催してしまう枠に囚われないスタイルが売りだ。

武藤昭平さんはジャズパンクバンド”勝手にしやがれ”のリーダーとして活動しており、CMやアニメ主題歌にも起用されている。”勝手にしやがれ”のCDジャケットも何点か手掛けておりアルバム発売に伴い絵画の個展を東京と大阪で開催、またガンの闘病中にも作成したデッサンなども東京にて絵画展を開いたりと音楽に絵画に活動範囲は多岐にわたる。

またウエノコウジさんは2003年に解散した”THEE MICHELLE GUN ELEPHANT”のベーシストとして活動し、現在は”the HIATUS”や”Radio Carpline”などのメンバーとして活動、また吉川晃司さんのツアーサポートにも参加するなどアグレッシブに動いている。

今回二人がこんな小さな町、三好市でライブをする事になったきっかけは、高松LIVEの前にもう一つライブできる場所を探していたことだ。高松にいる古くからの友人に場所がないか頼ったところ”LOCAL SNACK BAR Lily”の名前が出た。「やらしてくれるっていうから東京から7時間かけてやってきた(笑)」と気さくに冗談も出る。

今ライブハウスなどの活動がコロナの影響で自粛ムードの為インターネットでのライブ配信も試みたが、やはりお客さんを前にしてやるライブはまったく別物だと言う。

「やっぱりこうやって地方にきて初めてのお客さんと出会えてるのがいい。まだまだ後ろにドラムがいてドンチャカするバンドは出来そうにないが、去年からこうやって二人でいろんなことを守りながらならライブをやっている。最近こんな形でTVに出ることがないので何をしゃべっていいか(笑)」

と話すお二人はそれでもお客さんを前にして歌うことが出来るのがとても楽しそうだ。

 

リハーサル後に二人と関係者一同は三好市の地元の名物店、“焼肉とんちゃん”へ行き本番前に腹ごしらえをしたり、LIVE後には地元のひと癖もふた癖もある人々と夜中…いや早朝まで飲んでいたりした。元々は二人とも大のお酒好き、武藤さんは最近お酒を控えているがウエノさんは好きなお酒はなんですかと質問すると「茶色ければなんでもいい、なんでも好きだ!」とのこと。

そんな二人が地方の魅力は”人”だと答えた。その土地が生み出した独特な人、地域の名物人、そんな人柄と土壌に惹かれて好きになる。その人に会いたくなって気づいたら来てしまうそうだ。

LIVEをやっていて感動した瞬間は?と尋ねると

「30年近くやっているからね。でもやっぱりお客さんの前で出来たら言うことないね」

長く音楽を続けていて感じたのはLIVE配信は「生中継」、プロ野球の試合も生配信を見ていると球場に行きたいと思い、ライブもお客さんの前で同じ空気だったり振動だったりを味わう事に意味があると感じたそうだ。

「呼ばれればどこでも行ってしまう」今回のようなbarや居酒屋などでも開催したことがあるとの事。今回用意された音響機材などへの拘りに二人はとても感動していた。最近はiPadで編集が完了したりあらゆる事がデジタルに変わりつつある為、二人はいつも驚くそうだ。音楽業界などは特にそういった最新機器や新しいテクノロジーを実際に見る機会が多い分野かもしれない。

今回LIVEイベントを開催した”LOCAL SNACK BAR Lily”のオーナーである川人朋広さんがこの店をオープンしたきっかけとはなんだろうか。

「僕は一度しかない人生で見れる景色は限られていると考えていて、せっかくの人生より濃い景色を見るために20代頃から自分の店を持つという一つの目標がありました。
飲食店を開いて儲けたいだけを考えると人口の多い都会で店を持つってことになるんだろうけど、多感な青春を過ごした池田町でやる事に拘りを持ちオープンしました」

そんなLilyで大切にしている事とは。
「お客様とスタッフ、そして県内・県外を問わず先輩方や仲間たちに支えられて成り立っているお店です。その中の一つでも欠けると成立しないと考えて大事にしています。」

今回LIVEイベントを開催した思いをたずねてみた。

「“人の縁は点のようですが点と点がつながり線となり、糸の用に紡いでいき人の心を温める布になる”と教わりました。今回開催する事が出来たLIVEもまさにそのご縁によって開催出来たんだと感じています。元来、池田町は四国のど真ん中ということもあり、宿場町としての側面もあると認識しています。コロナ過によって“県外客お断りします”等の貼り紙が目立つようになり、わずか一年でそれが珍しい事ではなく当たり前の様になりました。多くの方が大切な人やモノを守る為、悩みに悩んで考え出した結果だと思います」

「先日政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身会長が『季節性インフルエンザと同等と認識されるまで2~3年かかる』との見通しを示しました。個人的には人と人との縁が繋がりにくい現状がまだまだ続くと思うと、すごく寂しく感じています。
今回コロナ過の中でのロックスターを招いてLIVEを開催するという事に賛否があるのは当然だと考えていましたし、過去に前例の無いことを行うということで新たな勇気も新たな知識も必要でした。結果としてLIVEは一人の感染者も出すことなく大盛況で無事に幕を閉じる事が出来ました。参加したお客様とスタッフ、全員がルールとマナーを守り意識の高い感染対策を徹底してくれた結果だと考えています」

「音楽と自由を愛する大人たちで作り上げた今回の前例が今後も様々な場面で反映されると思っています。以前の宿場町としての賑わいが戻り【縁】を【絆】に出来る力を持った池田町に、これからさらに沢山の方が訪れてほしいと願っています」

今回イベント開催をしたり今後の活動に注目が集まっている“LOCAL SNACK BAR Lily”だが、4月25日の0時をもって寂しいながらも閉店となる。6年という短いながらも濃い歴史に幕を閉じる為、最後までロックで自由なLilyで濃い時間を過ごしたいものだ。

 

(取材・文:堂野彩加)