四国のほぼ中央に位置する秘境エリア『祖谷』での追い山猟 | vol. 2

2021.02.28

特集

何世紀もの間続いてきた、三好市祖谷地方の伝統的な追い山猟。子供の頃から追い山に関わってきた、地元の猟師達のくらし。

四国のほぼ真ん中、徳島県三好市の山中を流れる祖谷川のさらに上流の方へ、中岡崇顕さんと日浦昇さん、チームとして猟をされているお二人の猟師小屋にお邪魔してきた。中岡さんは東祖谷猟友会の会長を務めている。東祖谷には、罠猟を行う会員を含め、現在25名の猟師が在籍しているそうだ。

「50年ぐらい前、祖谷には猟師が何百人もいて、私達は父親の猟について行ったり手伝ったりして、自然に猟について学んできた」中岡さんと日浦さんは、子供時代のことを語ってくれた。

「この周辺の男達はほとんど鉄砲を持っていて、狩猟は山の暮らしの一部。猟をするのはほとんどはウサギやヤマドリ。私達の父親の世代では、イノシシは珍しくて貴重だったので、肉は売って現金収入だった」

また、昔と現在との違いも語ってくれた。
「昔は鉄砲の許可は簡単に取れて、申請の会場として学校が使われたぐらい。しかし、もちろん今はとても厳しく研修に参加し、試験を受け、合格したら登録、そして登録後も研修会などが定期的にあり、本当に時代が変わった。今は罠猟のみの猟師もいて、鉄砲を持っている人は本当に少なくなった」

中岡さんと日浦さんは二人でチームとなって猟に行く。二人は、鹿の場合には猟犬を使わない。猟用の特別な装備をし、道具を積んだトラックで早朝に遠くの林道まで出かけていく。鹿を見つけたときは一人が鹿を追跡、もう一人は待ち伏せをするような形式で猟を行う。しかし、たとえ道路が通っている所まで車を使っても、その後は自分の足。やはり簡単な仕事とは言えない過酷な作業だ。

そして祖谷の人口が減るとともに里山の様子も変わり、祖谷での猟師の数も減り、また県をまたいでの山全体の環境も変わる事で、野生動物の数が急激に増えているそうだ。

自然環境の変化と生態系のバランス

約30年前までは鹿は珍しく、限られた数の雄のみしか獲ることができなかった。しかし近年、鹿の数は大幅に増え、それが生態系に影響を与えるところまで来ているそうだ。

現在祖谷では頻繁に鹿を見ることができる。中岡さんは、増えすぎた鹿の問題についても語ってくれた。鹿が畑に侵入して農作物に被害を与えるだけではなく、樹皮を食べることで原生林の木々をも枯らしてしまい新たな問題になっているとの事。祖谷の登山道では、鹿の食害に遭った木々を見かけることがたびたびある。また、剣山国定公園内でも鹿の食害から守るためのネットが張られているような箇所も少なくない。

そして少しでもバランスの取れた環境を目指すため、その必要性を認識した行政が特定の野生物については有害獣の指定を行い、猟友会を通して有害獣の駆除の依頼などもあるそうだ。

今後の狩猟について中岡さんと日浦さんからも「ぜひ若い世代に関心をもってほしい、次の世代に追い山猟も受け継いで欲しい」という、強い願いが語られた。

現代でも、伝統的な追い山猟の保存だけではなく、自然環境の面からも猟師が必要とされているようだ。

また近年では、全国でジビエブームとして狩猟肉への関心が高まっている。

このシリーズのパート3では、狩猟肉の有効利用としての「祖谷のジビエ」や、祖谷のジビエを提供しているお店などを紹介していきます。

(取材・文: ショーン ラムジー)

三好市公式観光サイト【大歩危祖谷ナビ】
https://miyoshi-tourism.jp/

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