四国のほぼ中央に位置する秘境エリア『祖谷』での追い山猟 | vol. 1

四国のほぼ中央に位置する秘境エリア『祖谷』での追い山猟 | vol. 1

徳島県三好市祖谷地方。追い山。猟師達は、体力、忍耐力、洞察力をもって、山の奥へ奥へと向かう。

「一、足。二、犬。三、鉄砲。」

これは、奥祖谷で追い山猟を行う、堂前英治さんの言葉。

四国のほぼ中央、徳島県三好市の奥祖谷での追い山猟について話してもらった。
祖谷地方で「追い山」と呼ばれる猟は、他地域では「巻き狩り」とも呼ばれ、犬や勢子(追い立てる役の人)と一緒に行う猟だ。

猟師の数が減っていく中、今でも堂前さんは猟犬と共に追い山猟に出かける。

堂前さんの作業場には、獲物を吊り上げるためのウィンチ、種類別のナイフをはじめとし、猟の後の作業のため様々な道具が備わっている。作業場に併設されたダイニングルームの壁には、薪が天井に届くほどまで高く積み上げられ、大型の鋳物のストーブでは薪が勢いよく燃えている。
また、建物には枝分かれした立派な角の鹿の頭のはく製や頭蓋骨なども飾られ、猟師のお宅にお邪魔していることを実感する。

「追い山に行ったときはたとえ世界一の猟銃を持っていたとしても、獲物を追うために良く訓練された犬がいたとしても、一番は山深くに入る自分の足が強くなければ意味がない」

これが、「一、足。二、犬。三、鉄砲。」であり、四国中央の急傾斜の山々で猟をするには、肉体的、精神的な強靭さが求められる。

追い山と猟師

冬はイノシシ猟、追い山猟の季節。堂前さんは4~5頭の犬を連れて山に入り、雪に残された新しいイノシシの足跡を探す。その足跡からイノシシの大きさや寝屋(寝床)の場所、距離などを長年の経験で判断する。

イノシシの足跡を見つけると、犬が放され、獲物を探し出す。人も犬も1日で10キロ、20キロ、時にはさらに長い距離を移動する。犬が獲物を見つけたときは、数頭でイノシシを取り囲んで逃げられないように吠え続け、そこに追いついた猟師が鉄砲で獲物を仕留めるという猟の慣わしだ。仕留めた後は、獲物を山から運び出すという、また骨の折れる仕事にはいる。

「谷底で150㎏のイノシシを獲ったときは・・・」と、堂前さんは続ける。「俺と他の仲間5人で、道路まで上げるのに9時間もかかった」朝に仕留めた獲物の運搬に一日中かかることもあったそうだ。

しかし、次第に時は移り変わり、昨今猟は日常ではなくなり猟師の数も激減した。野生動物の数は増え続けているが、現在堂前さんは猟犬とともに一人で追い山に行くことがほとんどだそうだ。

「子供の頃は、猟師と言っても、ウサギやヤマドリを獲るのがほとんどで、イノシシや鹿は珍しかった。俺が大人になったときはまだ猟師はたくさんいたけれど、一頭のイノシシを獲るのに大勢の猟師が組になって追い山に行ったから、50~60㎏のイノシシを獲ってもみんなで分けるとそれぞれにはほんの一握りの肉が手に入ったぐらい。でもそれでも嬉しかった。今は1人で猟をしても1日で何頭も獲ったこともある」

同じ山での猟でも、今と昔では環境がずいぶん変ってきたそうだ。

猟師の減少と、野生動物の増加、「追い山」シリーズのvol.2、vol.3では、その影響とジビエとしての狩猟肉有効活用などについてご紹介します。

(取材・文: ショーン ラムジー)