日本三大秘境のまち

四国のまんなか、秘境のまち三好市。その中でもさらに奥に入った祖谷の久保集落には、家族であたたかいおもてなしをしてくれると評判の古民家宿がある。茅葺きの建物に泊まり、目の前の畑からは採れたての野菜、そして囲炉裏を囲む。そんな贅沢な体験のできる古民家やど－紺屋(こうや)－を紹介する。

【前回までの記事はこちら】
祖谷のおもてなし　古民家やど－紺屋－　パート1　秘境に眠っていた宝に泊まる
祖谷のおもてなし　古民家やど－紺屋－　パート2　囲炉裏でいただく贅沢な山の伝統料理

秘境祖谷の歴史や自然を感じる　古民家宿での楽しみ

古民家宿泊の魅力は、まず第一に、その歴史ある建物に贅沢にも、泊まれること。見上げると、歴史を物語る、煤で真っ黒になった大きな梁と茅葺きの屋根裏がある。また、囲炉裏のある暮らしなどなかなか見ることもない。

第二に、その囲炉裏を囲んでいただく食事。紺屋では、特に祖谷の食事にこだわっている。特に、都市部から来た方々にとっては、珍しい、贅沢な山の料理が提供される。

そして、紺屋ではそれ以外の、ただ座ってのんびりするだけではない、様々なアクティビティも希望で体験できるのも魅力だ。

徳島県三好市　世界農業遺産にも認定された傾斜地農業の体験

祖谷は、山深い秘境だが、ここでの農業の形もまた独自だ。急な傾斜地にある畑には、その角度に驚くことも多いだろう。紺屋では、野菜の収穫体験ができる。もちろん、この野菜はその晩のお膳に並ぶことになる。季節で収穫する野菜も変わるのが楽しい。

雪の冬でも大根があり、その冬野菜の甘さに感動して、大根だけをつまみにお酒を楽しんだ方もいるとか。

また、集落の方からの差し入れもあるようで、なんと、とれたての松茸をみんなでいただいたこともあったという。

薪とかまどを使った古民家での料理体験　本当の火を使う

宿の囲炉裏では、炭をおこしたりできるが、手打ちそばづくりや、薪を使い羽釜でご飯を炊いたりできる別棟もある。そばを伸ばす広い作業台と、かまどがある。

特に薪など使ったことのない、お子さん連れの家族に喜ばれるそうだ。

こちらは、旦那さんの伸介さんが丁寧に教えてくれる。

工芸が集まり、折り紙体験もできる宿

紺屋のあちらこちらには、灯りや瓢箪アートなど様々な工芸品がある。これは、伸介さんが作ったものにはじまり、他は友人や紺屋ファンのお客さんが持ってきてくれたものだ。

真理さんも、インテリアや食器選びをしているが、手作りの箸袋など、隅々までも手を加えている。

そのクオリティに驚いた箸置きだが、それに感動した方々、特にお子さん達の希望で、いきなり折り紙教室が始まることも多々あるという。また、海外の方はみんな、大切に箸置きを自国に持ち帰るというのも納得だ。

これからの古民家やど－紺屋－　登山や奥祖谷観光客に向けたお弁当など祖谷の食を様々な形で楽しんでほしい

こうして、古民家宿として人気の紺屋だが、中山さんご夫婦はまた違ったことにもチャレンジしていきたいようだ。

お客さんと一緒に、重箱につめたお昼ご飯を持って、奥祖谷二重かずら橋に行ったりしたことが何度かあるそうだが、とても喜んでもらったそうだ。秘境の大自然に囲まれて、河原で広げるお弁当は、思い出に残る味になるだろう。

紺屋のある久保集落は、奥祖谷二重かずら橋が近く、また、登山など、奥祖谷の観光の拠点に便利な場所だ。そこで、祖谷の食材のお弁当など、食に関したことをやってみたいと話してくれた。

祖谷の雑穀入りお菓子と夢　いつかは古民家カフェも

この日、雑穀を使用した「ヤツマタボーロ」もいただいた。口に入れるとホロっと崩れる、やさしい味わいの焼き菓子だ。このほかに「ヤツマタビスコッティ」も東祖谷雑穀生産組合と共同開発、販売を行っている。お菓子の担当は、真理さん。

他にも様々なお菓子を作っており、伸介さんも「焼き菓子と合わせて、カフェなんかもできたらな、と思う事がある。」と、もうひとつの夢を話してくれた。「いろいろと許可など大変だけれど、観光の方がふらっと寄れたり、地元の人も集まれるような、カフェみたいな場所があったらいいかな。」始終穏やかな笑顔で話してくれた中山さんご夫婦だが、祖谷の暮らしを大切に思っているのが伝わってきた。

これからの「古民家やど－紺屋－」も楽しみだ。

古民家やど－紺屋－

https://kouya18508.wixsite.com/kominkayado
徳島県三好市東祖谷久保311

（取材・文・写真： ショーン ラムジー）

【関連記事】
>>四国のほぼ中央に位置する秘境エリア『祖谷』での追い山猟 | vol. 3
>>囲炉裏のある暮らし (Part-3)
>>奥祖谷マルシェで秘境を味わう　三好市東祖谷　秋の収穫祭　パート3