Iya Valley Tours 【part2】 秘境祖谷の暮らしを楽しむ
2022.11.21
観光客入国制限緩和とともに、現在、海外からやってくる多くの旅行者が有名観光地の再発見みならず、あまり知られていない、より本当の農・漁・山村地域への旅をも求めている。
四国のまんなか、秘境祖谷もその1つとして今多くの注目を集める地域だ。Iya Valley Toursは、地元住民であるガイド達が、旅する探究者たちへこの魅力あふれるエリアを案内している。
【前回の記事はこちら】
Iya Valley Tours 【part1】 地元ガイドと発見する秘境祖谷
徳島県三好市祖谷で冒険する~平家の伝説が残る西日本第2位の高峰・剣山へ
「これは想像していた日本と違う」そう言ったのはサラさん。夫のアンディーさんと共に、初めて日本を訪れている。「日本は建物の密集する都市に所々お寺があるぐらいと思っていたのに、この場所はまるで天国の様だ」
西日本で2番目に高い1,955m剣山の頂上へ向かう登山道に、3人は立っている。
Iya Valley Toursのガイドは、この山が何世紀にも渡る伝説に満ちていることを説明する。
「約800年前、敵から身を隠すため幼い安徳天皇を連れ平家が祖谷へ入山し、宝剣を剣山に奉納したという言い伝えがあります。しかし、もうその剣はどこにあるか誰も知りません」
彼らは平家も登ったかもしれない山道を頂上へと向かった。
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時を忘れる秘境の隠れ家 農業体験や囲炉裏を囲んで郷土料理が楽しめる古民家ゲストハウス
「私達は、今までたくさんの海外旅行をしてきたけど」サラさんは言った。「近代化や過度の観光開発と、そこへ押し寄せるツアー客の波を見て、早くここに来れば良かったと思うことが多かった。祖谷へはその前に来たかった」
しかしガイドは「祖谷は開発され過ぎになる、ということはないと思いますよ」と言う。
続けて「一緒に秘境の暮らしを見てきましたが、ここでは様々なことを自分で行うことが求められます。それに、どこからも遠くて人口も少ない。実際の暮らしは簡単ではありません。だから祖谷が今以上に、急激に他の街の様に変わるということはないでしょう」 とも。
前日、サラさんとアンディーさんご夫婦は、家族で営む祖谷の古民家ゲストハウスの1つ「紺屋」に滞在して祖谷の暮らしも体験した。
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滞在期間中は、ゲストハウスの目の前の畑で採れた野菜や、地元のジビエを使った祖谷の郷土料理が囲炉裏で調理され良い体験が出来たようだ。
しかし、水は山からの湧き水、曲がりくねった1車線の道路、更に冬の雪、祖谷は厳しい面もある。
サラさんは、なぜ元々こんなに過酷だと分かっている地域に住み始めた人達がいるのかと尋ねた。
ガイドのあきさんは「山は豊富な水をはじめ、植物、動物など自然からの資源が多かったこと。そして、百年ほど前に道路が出来るまでは、祖谷は行くのがとても難しい場所だったから、安徳天皇と落ち延びた平家の様に、敵に追われる人々の隠れ里としても最適だったかもしれませんね」
サラさんとアンディーさんは「なるほど。今でも何かから逃げ出したくなったら祖谷へ来れば良いね」と笑った。
祖谷の恵みを堪能する ホテル祖谷温泉~落合集落~地場食材を使った古民家ランチ
ジョンさんとアヴィさんのツアーでは、サラさんとアンディーさん夫妻とは違い、モダンな設備を備える祖谷温泉へ宿泊。このホテルは渓谷を見渡し、川まで下りて贅沢にかけ流しの温泉を楽しめる施設だ。
「この温泉はとても美しいロケーションにあって大満足。日本に何度も来ているけれど、祖谷は遠いと思っていたのでなかなか今まで来られなかった。思ったよりも本当に遠かった」と笑いながら、彼らも祖谷の遠さに随分驚いたようだ。
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2人は歴史ある落合集落を歩く。茅葺き屋根の家屋と、今も農耕されている棚田に感動しているようだ。
そして、ガイドに案内されて地元にあるランチのできるお店へ。古民家をリフォームしたそのお店は、多くの地元の食材を使用した手の込んだ食事を提供している。
「これはこんにゃく。コンニャクイモから作られて…」「これは祖谷の岩豆腐、名前のとおり…ポン酢と…」あきさんは、シェフのメニューの説明を丁寧に通訳していく。
「全部おいしいし、第一見た目もとても繊細で美しい!日本ではベジタリアンだと苦労するけれど、ここの料理は日本で今まで食べた内で1番だ」何度も日本に来たことがあるという2人も絶賛だった。
特別な祖谷の旅をするにあたって
「都市部とは違い、祖谷はゆっくりと時間を取って楽しんでもらいたい」とガイドのあきさんは言う。「しかし、あまり知られていないのが、祖谷の大きさです」
「高松や岡山などから、日帰りで祖谷にやってくる方もいますが、1日で祖谷全部をまわるのはちょっと忙しすぎるかもしれません。本当の祖谷と出会うには、静かな環境に溶け込めるような時間を持つのが1番です。祖谷に2泊もしくは3泊して、できれば1日は古民家などで山を眺めてのんびり贅沢に過ごすのもおすすめです」
「また、特に海外の方には、ぜひ祖谷に住んでいる地元の人がスタッフにいるツアーに参加してほしいです。ガイドによっては植物に詳しかったり、ハードな登山が得意だったり、『それぞれの祖谷の物語』を持っていて個性もあります。みんな、祖谷のことをかなり熱く話してくれるでしょう。ぜひ祖谷ではここでしかできない旅を心から楽しんでいただきたいです」
有名観光地よりも本当の日本の山村を体験したいと秘境祖谷に興味を持って訪れる旅行者は、どうやら多くの一般の旅行者とは少しタイプが違うようだ。そしてまた、祖谷の住人達も。
あきさんは、祖谷の事をこう語った。
「祖谷はのどかな所かもしれませんが、人々はとても外交的で自立しています。典型的に思われているような現代の便利さに慣れた、静かで少し恥ずかしがり屋の日本人のイメージとは離れているかもしれません。厳しい環境の中で暮らす祖谷の人々は強く、でもその苦労を知っているから他人にとても優しい。強くて温かい心を持った人たちです。祖谷の魅力は人なんです。」
また、彼女自身のことも教えてくれた。
「祖谷では人が少ないからこそ、1人で複数の技能を持つ人がたくさんいます。というより、昔からその必要があったのでしょう。そして、祖谷の住人となった私もガイドだけではなく、ヨガやアートの講師、罠猟、また休日には夫を手伝って家屋の修理をしたりと、祖谷の住人らしく様々なことをして暮らしています」
祖谷の住民と訪問者との懸け橋になりたい
祖谷での夢も、あきさんは語ってくれた。
「私は今Iya Valley Toursではガイドのみで、ツアー中に地元の方と観光の方との間に入って通訳をするぐらいです。でもいつかは、もっと地元の人にとっても訪問者とのコミュニケーションが楽しめるような、何か双方が楽しんで繋がれる機会を持てるツアーが出来たら良いなと思っています。懸け橋になるには英語だけでは足りないと思うので、まだ先は大分長いですがスペイン語やタイ語も勉強中です」
祖谷で生まれたIya Valley Toursは美しい自然だけではなく、強く温かい祖谷の人々と本当の祖谷を見せてくれるだろう。
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【関連リンク】
Iya Valley Tours
https://www.iyavalleytours.com/
三好市公式観光サイト【大歩危祖谷ナビ】
https://miyoshi-tourism.jp/
古民家やど紺屋
https://kouya18508.wixsite.com/kominkayado
ホテル祖谷温泉
https://www.iyaonsen.co.jp/
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平家屋敷民俗資料館 (三好市重要有形文化財)
平家の資料や遺品を展示しています。安徳帝の御典医、堀川内記の子孫代々の屋敷。堀川内記は、平家滅亡の折に一族とともに入山し、薬草の豊富な祖谷の地で、医業と神官を務めた人です。
庭には、樹齢800年の老樹がそびえ、江戸時代の民家をそのまま保存した館内には、鎧・旗・古文書・生活用具などが展示されています。 -
落合集落(国選定重要伝統的建造物群保存地区)
落合集落は、東祖谷のほぼ中央、祖谷川と落合川の合流点より山の斜面にそって広がる集落である。集落の起源は明らかになっていないが、平家の落人伝説や開拓伝承などが祖谷地方には残っている。集落内の高低差は約390mにも及び急傾斜地に集落を形成している。
江戸中期から昭和初期に建てられた民家や、一つひとつ積み上げた石垣と畑などの光景は、なつかしい山村の原風景を醸し出している。
平成17年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。 -
剣山
標高(1,955m)神秘の雲海に、紀州や瀬戸内海、足摺岬までも見渡せる見事な眺望を誇る四国の尾根。安徳天皇の剣を山中に隠したという伝説からこの名が付いたとされ、山岳信仰の霊山として広く知られている。
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