徳島県三好市の食の魅力を生かし観光誘客を目指すガストロノミープロジェクト。〜アンバサダー・大桃美代子さんの秘境探訪 Vol.2〜
2022.01.29
「ガストロノミープロジェクト」アンバサダー・大桃美代子さんが見た“秘境・祖谷”
徳島県三好市で、地場産の食材を活かした“新しい食の魅力創出”を目指してスタートした「ガストロノミープロジェクト」。このプロジェクトには、地元で食産業に携わるメンバーだけでなく知識豊富な専門家も参加している。アンバサダーに就任したタレントで一般社団法人 国際SDGs推進協会 理事の大桃美代子さん。初めて訪れるという“秘境・祖谷”への旅に同行した。
中四国で初めて世界農業遺産に認定された「にし阿波世界農業遺産」を擁する奥祖谷へ
三好市内の酒蔵を訪れた後、一路祖谷の里へ。(酒蔵を訪れたvol.1の記事はこちら)
祖谷エリアを訪れる目的は平成30年に「世界農業遺産」に認定された「にし阿波の傾斜地農耕システム」の視察だ。自らも「桃米」なるオリジナル米の栽培を行う大桃さん。
「祖谷郷のことは知っていましたが足を運ぶのは初めて。世界農業遺産に認定されていて日本三大秘境のひとつという場所をこの目で見るのが楽しみでなりません!」。
祖谷雑穀生産組合のメンバーによる「にし阿波世界農業遺産」レクチャー会 400年にわたり受け継がれる徳島県吉野川上流地域の人々の知恵と工夫
祖谷桃源郷「談山」にて祖谷雑穀生産組合 組合長・杉平美和さんや組合員の面々と合流。生産者の立場から直接大桃さんに「にし阿波の傾斜地農耕システム」を紹介する機会が設けられた。にし阿波とは美馬市・三好市・つるぎ町・東みよし町の県西部エリアを指し、このあたりでは400年以上にわたり急な傾斜地を利用した農業が行われてきた。
「祖谷はご覧の通り山深いでしょう。平地にしようとすると耕作面積が減ってしまうんです。斜面をそのまま畑にした方が効率がいいということで、畝を斜面に対して水平にしたり、カヤを敷いて土が流れるのを防いだり。先人たちが色んな工夫をしてこの場所で作物を作ってきたんですよ」
と杉平さん。
祖谷地方に代々続く種を守り育てられた希少な在来種の雑穀に感激
祖谷には平地が少ないため米の栽培が難しく、ソバや麦、いも類などが貴重な作物となっている。ヤツマタ(シコクビエ)、コキビ、アワ、ヒエなどの雑穀もそのひとつ。雑穀マイスターの資格も持つ大桃さんはこれらの種を見て大感激! 「貴重な種を実際に見れるとは思いませんでした。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、現代において在来種はとても希少なんです」。
組合の面々は「在来種を作ることを自分たちが辞めたら、種そのものが絶えてしまうから」と口を揃える。それを受けて大桃さんは「農業にやさしいということはありませんが、特に厳しい環境で在来種を護っている方々にお会いすることができて感激しています」と語った。
急峻な農地に佇む、徳島剣山系傾斜地農業のシンボル「コエグロ」に生きるための知恵を見る
実際に農作地へも訪れた。傾斜地に点々と立つのは「コエグロ」と呼ばれるカヤを束ねたものだ。
「冬には畑に撒いて寒さを防ぎ、春なれば畑を耕すときに土にすき込むことで肥料にもなる。カヤを保存するため、秋にみんなでカヤを刈ってこのコエグロを作るんですよ」と杉平さん。
大桃さんは背丈を優に越す高さのコエグロを眩しそうに見上げながら「作物を効率よく育てるための知恵が脈々と紡がれているんですね。生きるための知恵が受け継がれていることも世界農業遺産に認定された理由のひとつなのかもしれませんね」と笑顔を見せていた。
大桃美代子さんが感じた「祖谷の雑穀」の可能性
「私自身、雑穀マイスターという資格を持っていて普段の料理に雑穀を活用することも多いんです。食物繊維やミネラルが豊富、ポリフェノールも含んでいるので栄養価が高く体の調子を整えるのにすこぶる良いんですよ」。幼い頃に体があまり丈夫でなく、本当に体に良いものを見極めてきた大桃さんの言葉だからこそ重みがある。「美容や健康に関心を持つ若い方々から注目されていたり、外国人の方々にとっては”スーパーフード”として認識されていますよね」。昔と違い、昨今では雑穀に対するイメージが良いものに変わったと言えるだろう。
祖谷の雑穀を使うなら、どんな料理を作ってみたいか尋ねると「キビは挽肉のような食感になるので、代替肉として使うのはどうでしょう? ヴィーガン嗜好、アニマルウェルフェア(※)の高まりを踏まえると今後代替肉がもっと必要とされてくると思います」と答えてくれた。次世代を見据えた「食」が鍵となってきそうだ。
「今までに見たことのない農業の形でした。誇りを持って伝統を繋ぐ方々がいて、元気な笑顔を向けてくれる彼らとの出会いは何ものにも代え難い財産です」。人々の見せる笑顔に惹かれたという大桃さん。
次回は大桃さんが出会った”元気自慢”な名物おばあとの交流をお届けする。
※アニマルウェルフェアとは
動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態のこと。(出典:農林水産省ホームページ)
次の記事はこちら
>>「アンバサダー・大桃美代子さんの秘境探訪 Vol.3〜“元気印”の三好人との出会い」
>>「アンバサダー・大桃美代子さんの秘境探訪 Vol.4〜大桃美代子さん、徳島県三好市観光特使に就任!」
大桃美代子(おおもも・みよこ)
Instagram:miyoko_omomo
タレント、新潟食料農業大学客員教授、一般社団法人 国際SDGs推進協会理事、農業ジャーナリスト。新潟中越地震の復興の姿を見てもらおうと、故郷で「桃米」を栽培している。雑穀エキスパートの資格を取得するなど、食への造詣も深い。
三好ガストロノミープロジェクト
Instagram:miyoshi.gastronomy
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桃源郷祖谷の山里 茅葺き民家ステイ
宿泊
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落合集落(国選定重要伝統的建造物群保存地区)
落合集落は、東祖谷のほぼ中央、祖谷川と落合川の合流点より山の斜面にそって広がる集落である。集落の起源は明らかになっていないが、平家の落人伝説や開拓伝承などが祖谷地方には残っている。集落内の高低差は約390mにも及び急傾斜地に集落を形成している。
江戸中期から昭和初期に建てられた民家や、一つひとつ積み上げた石垣と畑などの光景は、なつかしい山村の原風景を醸し出している。
平成17年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。
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