秘境のまち徳島県三好市 山村の原風景 落合集落 パート2 

2021.10.01

特集

茅葺き屋根の古民家、傾斜地の畑、石垣の続く里道。落合集落は祖谷の風土に根付いた伝統的な暮らしがいまだ残された、秘境の生きた宝ともいえる集落だ。 

かつて、集落での唯一の交通手段は、徒歩であった。

今では集落の中を曲がりくねった細い舗装された道路も通っているが、この集落をはじめ、祖谷に道路が通るのは大変遅く、それまでは、家々や耕作地は里道のみでつながっており、人々がそこを行きかっていた。 

多くの集落で里道が失われていく中、落合集落ではいまだ、この里道が使用されている。地図上で赤い線で表されていたこの里道は、地元の人々からは「赤筋道」と呼ばれている。

ところどころに里道や石垣の案内版も設置されており、集落を見学するには徒歩が一番である。 

伝統が生き続ける場所

祖谷では、急峻な土地にすべてが建てられているため、家を支えるための石垣、広い平面を確保するための水田や畑の石垣など、あちらこちらで昔からの知恵と労力を目にすることになる。 

また、祖谷の農業は独自である。傾斜地の畑では、春から夏にかけてじゃがいも、夏から秋にかけては、そばが栽培される。 

祖谷の土壌は石が多く、その水はけのよい土が、煮崩れをしない凝縮した祖谷のいもをつくる。 

取材時はちょうど、そばの白い花が一面に咲いていた。収穫後は、野外に作られた大きな枠(ハデ)に掛けられて、そばが乾燥されているのを見かけることになる。 

また、秋から冬にかけて、円錐状の草のかたまりもあちこちに立ち始める。これは、「コエグロ」と呼ばれ、周辺のカヤ(ススキ)を刈り取ってまとめたもの。カヤ茅葺き屋根の材料ともなる植物である。乾燥させた後、細かく切って畑に入れる。傾斜した畑の土砂の流出を防いだり、肥料となったり、土の乾燥を防いだりする。風土に根付いた伝統農業である。

この伝統的な独自の傾斜地農耕システムは、2018年、国連食糧農業機関(FAO)によって、「世界農業遺産(GIAHS)」に認定された。

そして、落合集落の中心、三所神社へも里道を通って行ってみる。杉、ケヤキをはじめ、古木に囲まれた、静寂な一角。その名の通り、三つの神社が合祀された、祖谷の中でも最も大きな神社の一つである。 

ここでは、旧暦の6月8日に夏祭り、8月5日に秋祭りがあり、御神輿、祭礼行列、弓の行事などが行われる。太鼓や鉦を鳴らす子供を載せた、だんじりも祭りの大事な役目を担う。上方からの文化とも見える特徴のある伝統的な祭りである。 

 

パート3】では、落合集落の茅葺き屋根の民家の紹介と、集落での宿泊について紹介する。
パート1】リンク

落合集落 

https://miyoshi-tourism.jp/spot/ochiaishuraku/ 

祖谷そば そば道場 

https://www.awanavi.jp/spot/20887.html 

(取材・文: ショーン ラムジー、写真:大歩危祖谷ナビ & ショーン ラムジー)

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