にし阿波世界農業遺産 徳島県三好市東祖谷  雑穀の伝統を受け継ぐ人々 Part 2 

2021.07.16

特集

日本三大秘境ともよばれる徳島県三好市東祖谷。集落は傾斜地に張り付くように点在し、そこでは昔から伝統的作物を育ててきた。今、東祖谷では地元の人々がその伝統的作物と農法を後世に伝えるべく活動を行っている。  

小学生による「やつまた」の植え付け 

628日、三好市東祖谷にて、やつまた(シコクビエ)の植え付け作業が、東祖谷雑穀生産組合指導のもと、東祖谷小学校6年生とボランティアの方々によって行われた。 

当日は、先生方に引率され、東祖谷の小学6年生5人がやってきた。 

畑には、90歳に近いこの集落の方、雑穀組合の方々や地元の協力者、県の農業振興課の方、徳島大学の学生、そして一番若い世代であるの東祖谷小学校6年生と様々な世代が集まった。受け継いでいく農業遺産としてとても象徴的である。 

また、植え付け行事の会場となるこの畑も、東祖谷雑穀生産組合が引継ぐまでは、祖谷で最後まで「やつまた」を育てていた畑で、全ての種はここから受け継いでいる。 

さっそく子供たちには15センチほどに育てられたやつまたの苗が渡され、畑で植え付けが始まる。畑は傾斜が急なため、しゃがむのさえ慣れないと難しそうだ。 

普段は、農作業はほとんどしないため「むずかしい」と言いながらも、丁寧にひと苗、ひと苗と植え付けていく。畑には、子供たちの手できれいにやつまたの苗が並んでいく。 

上の畑が終わると、下の畑に移っての植え付け。やはりこちらの畑も急傾斜。子供たちに質問すると「ちょっと難しいけれど、去年もやったし、大丈夫。」と笑顔を返してくれる。 

その様子を見守る集落の方にもお話をうかがった。今年88歳、この日はこの畑で一番の年配者である。 

「昔は今と違って、祖谷は山全体が畑で、やつまたもどこででもつくっていた。次第にみんながやめていく中でも、ここの畑の方は毎年自分でやつまたを作っていた。この畑は奥祖谷では最後まで残ったやつまたの畑。こうやって雑穀組合の次の世代に引き継がれて、子供たちにも教えて、ひと安心。私はもう卒業。」と感慨深く話してくれた。 

Part 3では、未来への取り組みを紹介する。 

(取材・文・写真: ショーン ラムジー)

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