にし阿波世界農業遺産 徳島県三好市東祖谷 雑穀の伝統を受け継ぐ人々 Part 1
2021.07.13
日本三大秘境ともよばれる徳島県三好市祖谷地方。祖谷の集落は傾斜地に張り付くように点在し、そこでは昔から伝統的作物を育ててきた。今、東祖谷では地元の人々がその伝統作物と農法を後世に伝えるべく活動を行なっている。
平成30年、この独自の農法は「にし阿波の傾斜地農耕システム」として国連食糧農業機関より「世界農業遺産」に認定された。
〜伝統作物と農法を受け継ぐ〜
祖谷では、昔から40度にもなる急な傾斜地で農作物を育ててきた。ほとんど平らな土地のないこの地域では米の生産が難しく、ソバや麦、雑穀、いもなどは大切な作物だった。
祖谷で育てられてきた雑穀。アワ、ヒエ、キビ、やつまた(シコクビエ)など。シコクビエは穂先が八つに分かれることから、祖谷では「やつまた」と呼ばれている。
今ではその栄養価から、スーパーフードなどと呼ばれているが、食生活の変化で需要が減り以前の様に作られなくなったのに加え、現在では生産していた世代が高齢となり農作業が難しくなるなど、生産量が少なく、幻の作物となりつつある。
その伝統作物の保存のため地元有志により、平成28年、東祖谷雑穀生産組合が立ち上げられた。
6月28日、標高800mの集落で、やつまた(シコクビエ)の植え付け作業が、東祖谷雑穀生産組合指導のもと、東祖谷小学校6年生とボランティアによって行われた。
そこで、会長の杉平和義さんに、やつまた栽培についてお話をうかがった。
「私たちのやつまた生産は6年目、気候変動など問題もあり、生産量をそれほど増やせないのが難しいところ。大体1年で60kgから、一番多い時で100kgぐらい収穫がある。
去年、徳島県の別の地域に種を譲ったが、そこではうまく実らなかった。やはり、祖谷の標高や寒暖差がやつまたの栽培に適しているのかもしれない。」
祖谷の「やつまた」は本当に貴重な雑穀であるようだ。
Part 2では、やつまたの植え付け行事を紹介する。
(取材・文: ショーン ラムジー、写真: 東祖谷雑穀生産組合& ショーン ラムジー)
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