天空の徳島柚子を育てる中村 博さん vol.2  安心・安全の柚子作り

2020.12.16

三好人

中村博さんが営む『中村農園』。最高に気持ちいい場所で、柚子を育てている。その名も、天空の徳島柚子。

【前回の記事はこちら】
>>天空の徳島柚子を育てる中村 博さん vol.1 農園のベンチから見た光景

徳島県にし阿波地域では、昔から空に近い山のことを「ソラ」と呼んできた。中村農園の柚子畑も、「ソラ」の急斜面に広がっている。

「ここからの眺めは最高で、まるで天空に浮かんでいるようでしょう? そんな山の農園で育てた柚子だから、『天空の徳島柚子』と名付けました」と言うのは、『中村農園』の中村博さん。

同農園が販売している柚子果汁『山ゆず搾り』(600円税込)は、「そらゆずしぼり」と読む。「ソラ」で作られた柚子の果汁ということだろう。そして、新商品となる『ゆずシロップ』を春から販売すべく、地元企業と一緒に開発を進めているとのこと。それもまた、楽しみである。(タイミングを合わせて、『山ゆず搾り』は廃版の予定)

 

 

以前、果樹園を案内してもらったときに、畑に足を踏み入れると、そのやわらかさに驚いた。「土がフカフカとやわらかいでしょう?これは、下草にナギナタガヤを生やしているからなんです」と中村さん。

ナギナタガヤはイネ科の植物で、春に成長して徐々に枯れ倒れ、一面に藁を敷いたような状態になる。すると、土壌の浸食や養分の流出を防ぎ、夏場の地温上昇や乾燥を抑え、根の生育を保護。

そして、枯れたナギナタガヤは有機物の供給源になると共に、根が枯れて土に穴が開くことで通気性が改善し、有機養分や水分がゆっくりと吸収されて、土づくりに重要な役割を果たす。

だから、除草剤や化学的な農薬は使用しない。有機栽培で認められている天然物由来の農薬を最低限に抑え、害虫の天敵や土の微生物など、自然の力を借りることで、柚子の木を育てる環境を作っている。

中村さんは、より安心して『天空の徳島柚子』を食べてもらえたいと考え、2020年10月、有機JAS認証を取得した。有機JASは、日本農林規格に基づき、農林水産大臣が定めた品質基準や表示基準に適合した農産物に与えられる認証で、有機JAS認証を受けた柚子だけが、「有機ゆず」として認められる。

 

 

有機JAS法に定められている生産方法の主な基準には、次のようなものがある。

①堆肥などによる土作りを行い、収穫3年以上(多年生作物)前から、化学的肥料及び農薬は使用しない。

②栽培期間中も、禁止された化学的肥料及び農薬は使用しない。

③遺伝子組換え種苗を使用しない。

④収穫後も有機以外の農産物と混ざったり、薬品等に汚染されないよう管理する。

⑤生産から出荷まで生産工程管理記録などの作成を義務付け。

その他にも、種苗の規制や機械及び用具の管理、保管方法など多岐に渡って定められている。さらに、この基準に適合した生産が行われているかを、毎年1回第三者機関による現地検査が実施される。

こうした厳しい審査を乗り越え取得した有機JAS。だからこそ、果実や果汁はもちろん、皮も安心して料理に使用することができることを知ってほしい。

 

 

すべての食材には物語がある。食材が作り出される背景を知ることで、新たな食の魅力に出会えることもある。『天空の徳島柚子』、その名に託された想い、柚子が育った景色の素晴らしさ、安心・安全の仕組み、そうした背景を共有できたら、三好の食はもっとおもしろくなるに違いない。

中村農園公式HP:https://www.nakamurafarm.com/
(文/大掛達也)

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