誰にもできないことを探して……|YAMAYA宿主・大野健さん③

2021.06.24

三好人

ゲストハウスYAMAYAの店主、大野健さん。通称、ケン。ここでもケンと呼ばせてもらう。大学生活も終盤になり、就職を考えるタイミングへ。

「まだ、フィリピンへ行く前、大学のゼミ教授と飲んでいたとき、就職って何だかわかないって相談したことがあるんです」とケン。以下、当時のやり取りを鮮明に記憶している。

教授「働くってなんだと思う?、なんで働かないかんと思う?」
ケン「金を稼ぐためじゃないですか?」
教授「間違ってはない。アブラハム・マズローという心理学者を知っとるか?人間の欲求を5段階に分けとるんやが、なんやと思う?」
教授「一番下は睡眠、食欲、性欲。その上に2つあって、さらにその上に、自己顕示欲(承認欲求)と自己実現欲求がある。自分がこうなりたいという欲求や」
ケン「どういうことですか?」
教授「あとは自分で携帯で調べてみ」
と言って、教授は支払いをせずに帰っていった。

ケンは、仕事はお金儲けの為だけじゃない、自分のしたい事を実現するために仕事がある、と解釈した。そして、4回生になり、周囲の就活モードに押されて活動を始めたが、その時点では、自分が何をしたいのか見つけられていなかった。

「せめての希望は、全国転勤がある仕事。その条件で探した結果、ホテルの運営企業が当てはまって、トントン拍子に合格しちゃったんです。ただ、ホテルマンの面接と事務職の面接でネクタイの色を変えたり、ちょっと工夫をしたんですが、そのことが面接官の目に止まって、好印象だったみたいですね」とケン。その企業は、東証一部上場、業界でもトップクラスだというから驚きだ。

だがしかし、そのまますんなり就職といかないのが、ケンらしいところ。年明けの1月、旅行で訪れたフィリピンの海で見た光景が、彼の心を変えてしまった。

そこは、マタブンカイ。首都マニラから100㎞ほど南にある、夕日と星空が美しいビーチである。それ以外、何もない。だからこそ、心を無にして、のんびりと過ごせる場所だ。

「カヤックで海に浮かんで、マニラ湾に沈む美しい夕日を見ていたら、『あ、もう。。。いっかぁ』と思ってしまったんです。希望や願望がないと思っていた世界には、こんな素晴らしい光景が広がっている。今までなんとなく歩んできた場所、無理してそこにおらんでも、もっとこんな光景が見たい。そう思っちゃった」とケン。

その気持ちのまま、その日のうちに会社へ電話し、辞退の申し出をした。相当驚かれたが、地元へ帰らなくてはいけなくなったなど、なんとか説明をして受け入れられたという。

大学を卒業するまでは、友人の家を転々としながら神戸で過ごし、卒業後、山城へ帰ってきた。そして、父から「仕事もないんだし、手伝え」と言われ、始めたのが『YAMAYA』である。

余談ながら、その時、ケンはアキレス腱を切っていたらしい。手伝うと言いながら、役立てることはあまりなく、オープン日は迫ってくるものの、父はアルバイトの募集もしない。不安が募る中、突然、「今日からやるぞ」と言われ、まさにその日からオープンした。ケンが「え、今日からオープンなん?」と驚いたのは、言うまでもない。

仕事とは何か?
なぜ働かなくてはいけないのか?
誰しもが一度はぶつかる問題に、『YAMAYA』の店主として、ケンは答えを見つけたのだろうか?

次回は、海外から多くの宿泊客を招いてきた『YAMAYA』の魅力、そして、これからの『YAMAYA』について書いていきたい。

 

YAMAYA

Webサイト:https://www.kominkayamaya.com/

大野 健(YAMAYA)

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