誰にもできないことを探して……|YAMAYA宿主・大野健さん②

誰にもできないことを探して……|YAMAYA宿主・大野健さん②

山城のゲストハウス『YAMAYA』のオーナー、大野健さん。多くの外国人利用者と同じように、ここでも親しみを込めてケンと呼ぶことにしている。

1995年1月11日、山城に生を受け育ったケン。高校は貞光まで通った。旅行が好きだった。というのも、ケンの家のテレビでは、父の影響で『深夜特急』の映像が毎晩のように流れ、それを見ていた影響によるものだろう。

『深夜特急』は、1986年から刊行が始まった沢木耕太郎によるノンフィクション紀行小説であり、バックパッカーのバイブルともなっている。そして、1996年には、俳優の大沢たかおが主演するドキュメンタリードラマとして映像化された。

インドのデリーから、イギリスのロンドンまで乗り合いバスで旅することを試みて、結果、香港・バンコクを経て、ユーラシア大陸を横断する紀行文である。ドキュメンタリードラマでは、アジアからヨーロッパへ、それぞれの国の熱気や人々の息遣いまでが伝わるような映像だった。

「中でも、インドのデリーを訪れた場面で、人々がガンジス川で沐浴している姿が印象的で、今でも覚えているくらいです」とケン。そのうち、自分も同じ場所に行きたいと思うように。

高校卒業後は、父の勧めで大学へ進学。しかし、とくにやりたいことは見つかっていない。だから、海外へ行ける大学がいいと、指定校推薦で進学できて、名前に国際と付いている神戸の大学を選んだ。ただ、その選択に疑問が生じたのは、入学してすぐだった。

「入学式に出たら、リーゼントの学生が8人くらいいた。一人おったら充分なのに。。。右から、赤髪、赤髪、リーゼント、赤髪、一人とばして、リーゼント。そんな感じでした(笑)」。

早々に大学に興味を失ったため、バイトに明け暮れた。ラーメン店やバーなど、3つほどの掛け持ちで、業種は10種類ほど。友人とチームを組んで派遣バイトのオペレーションを作ったりもした。大学時代は、お金にお困ることはなかったようだ。

大学2回生のとき、オーストラリアに留学した。きっかけは、ラーメン店のバイトから離れたい一心だった。店長は、若い頃にヤンチャをしていたようで、仕事以外の時間にも付き合わされたり、お金を巻き上げられたり、それでも怖くて辞められず、国外逃亡する気持ちに近かったと振り返る。

しかし、オーストラリアでの生活は長くない。ほぼ1ヵ月。滞在したはいいものの、「何か違う」と感じて辞退したのだった。

その後、もう一度留学のチャンスが訪れた。そのための面接があると、2日前に知った。当時、まったくと言っていいほど英会話能力はなく、面接担当の教授に、フィリピンへ行きたい気持ちを日本語でまくし立てた。その情熱が伝わったのか、2つ下の後輩の面倒を見るという条件で、交換留学することに。

しかし、留学早々、コミュニケーション能力皆無な自分に絶望するしかなかった。スーパーマーケットで買い物もできず、レストランで注文もできず、当然、学校で友達もできず。精神的に追い込まれ、2週間ほど学校へ行けない状態に。ただ、ケンは、そこで考える。

「学校の近くのスタバに大学生がたくさんいたので、ここにいるヒマそうなヤツから話しかけようと。しかも、何か注目されなきゃいけないと思って、髪の毛をドレッドにしました。学校は制服だったんですが、あえてアロハシャツにダメージジーンズという恰好をして」とケン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま直撃したところで、学校の門前で立ち入りを拒まれるに違いない。そりゃ、そうだ。しかし、ケンは用意周到。前日に、翻訳アプリで翻訳した英語の手紙を用意し、担当教官へ渡してもらえるように頼んでいた。

そこには、「学校に行くのが苦しい。友達もできません。でも、だからこそ、俺はこのスタイルを選びました。私服で登校することを許してください」と書いていた。2週間は粘るつもりでいたが、1日目で許可がおりた。やってみるものである。

すると、学校で目立ち始め、ちょっと悪そうな学生から話かけられるように。英語ができないことを伝えると、「こんなおもしろいやついないから」と英語を教えてもらえるようになった。すると、だんだんケンの周囲にいた学生たちも私服で登校するようになり、ついには校則まで変更され、土日は私服で登校できるようになってしまった。

6ヵ月間の留学を終える頃には、TOEICの成績が630にもなっていた。ちなみに、留学前の成績は230。高校生以下のレベルだったことを、付け加えておく。

フィリピンの学校で出会った友人とは、その後も連絡があり、今でも遊びに来てくれるとか。留学では、最初こそ友達つくりに苦しんだが、決して人見知りなわけではない。自分でキャラを作り、なりきることもできる。
「フィリピンでは、スターが来ましたよ!みたいなキャラで、正直、ドヤって感じ(笑)」とケン。

こうした経験やキャラ作りが、いまのゲストハウス店主というシーンで生かされていることは、間違いないだろう。

いよいよ就職活動へ。というところだが、話の続きは次回のお楽しみ。

 

YAMAYA

Webサイト:https://www.kominkayamaya.com/

大野 健(YAMAYA)

facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100013337920634