「続けるメリットを実感したから続けられる」地域交流拠点箸蔵とことん 島 和也さん  

2020.12.14

三好人

早朝、いつものお店でコーヒーを飲み、店主と立ち話をする島和也さん。たわいもない話から友人や仕事の話、はては世界の情勢についてまで膨らむ。しかし、話題の中心に置いてあるのは地域交流のことだ。彼は、池田町州津にある地域交流拠点箸蔵とことんのなかで広報・企画担当をしている。

“地域交流拠点 箸蔵とことん”は高齢者/障がい者のプロである社会福祉法人池田博愛会が管理・運営しており、特徴としてかかげている買い物支援、子育て支援、自立支援、多世代交流といった取り組みをベースにした地域の拠り所になっている施設だ。

 

島さんはいくつかの企画に携わっており、その一つが“Tocoton喫茶”である。毎月第1日曜日に開催される小規模のマルシェといった感じで、毎月、出店者を募り3店舗から7店舗ほどが並ぶ。「それぞれのお店のPRもそうですが、出店者同士の交流になればうれしいです」と島さん。まもなく“Tocoton喫茶”は1年目を迎えるが、出店者同士の交流から新たな商品開発の話も生まれはじめている。そうやって彼は交流のきっかけをつくり、もちろん中にも入って課題を共有し、イベントを維持推進している。

ブックトレードもその一つだろう。2020年2月からはじまった“読み終えた本の交換交流会”である。

当初はイベントスペースで開催され、テーブルに本を並べて、本好きの人たちの交流の場として開催されていた。もっと自由に本の交換が行われないかと思い、現在は、店内に本棚を常設し、読まなくなった本を持ってくれば自由に好きな本と交換できるようになっている。3冊持ってきて、気になる1冊だけを持ち帰る人もいれば、高そうな図鑑と短編の文庫本を交換する人もいる。ものとものの等価交換ではあるが、価値の捉え方は様々であることも楽しい。利用の仕方もそれぞれあり、「仕事の合間だと思うんですが、昼食時に来られる方がいるんです。ほぼ毎日、本棚をじっと眺めて1冊手に取り、食事と一緒に楽しんでいる様子をみかけると、なんだかうれしくなります。」と笑顔で話してくれた。他にも“tocotonカルチャー”と題したカルチャースクールもスタートしている。

島さん曰く「続けるメリットを実感したから続けられるし、 続けないデメリットを知っているから続けられる。続けたもん勝ち。」だそうだ。もの・ことやひとの交流ができるたのしい企画が生み出され、それを少しずつ続けていくことで、いろいろな人が訪れ、興味の渦を更に大きくしてくれる。そうやってこの施設が地域の拠り所になってゆくのだろう。

 

彼は毎朝目が覚めると5分間だけ瞑想をするそうだ。いろいろ人と繋がり、交流が増えてくると自身の考え方やアイデアを見失うこともあるように思うが、「1年くらい続いている瞑想は、顔を洗うくらい当たり前の行いになっていて、本来自分の持つニュートラルな位置へ自然と戻せるようになりました」と話す。地域交流の機会を生み出すことはとても時間がかかることもある。自身を整えて、準備を怠らない彼がまた頼もしく見えた。

 

(取材・文・写真/横山道雄)

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