誰にもできないことを探して……|YAMAYA宿主・大野健さん④

誰にもできないことを探して……|YAMAYA宿主・大野健さん④

秘境の隠れ家のようなゲストハウス、『YAMAYA』。店主の大野健さん(ここではケンと呼ぶ)のおもてなし、料理、ドリンク、そして、山城の豊かな自然、古民家ならではの風情などが相まって、外国人旅行者から絶大な人気を集めていた。

以前は、宿泊客の約8割が外国人だった。洋の東西を問わず、バックパッカーを中心に、ジャーナリストや脳科学者、日本茶のバイヤーなど、業種もさまざま。瞑想しにくる人やスケッチをする人、自然を堪能するためにハイキングする人など、観光目的というよりも旅行上級者が多かった。バックパッカーでも、貧乏旅行ではなく、マナーの良い人たちが集まるような宿だったのだ。

「自分としては、血はつながっているけど、あまり会っていない遠い親せきみたいな感じで接するようにしています。いとこだと、ちょっと馴れ馴れしすぎる(笑)」とケン。

この距離感が、宿泊者にとっては心地よい。困っていたら頼りやすく、また、何ごとも相談しやすいのだろう。食事のときに、一緒にお酒を飲むこともある。その場で仲良くなって、『カラオケしよう!』と盛り上がり、街まで出てカラオケをしながら飲んだりすることもある。

 

外国人宿泊者と一緒にいった『居酒屋うさぎ』(池田町)にて。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お酒を飲みながら、いろいろな国の人と話をするのが楽しいですね。全然違う文化があって、これまで知らなかったことを知ることができる。ネットで調べるのとは、全然違う。そうすると、自分のアンテナもチューニングされて、よしまたがんばろう!って思えるんです」とケンは言う。

しかし、新型コロナウィルスの蔓延によって、状況は一変。利用客のほとんどは日本人になり、外国人と接する機会も減ってしまった。ただ、そうした中でも、次へのステップを踏み出しつつある。

「内装を少し変えたいと思っていて、あと、雑貨の販売もできれば。食器なんかは、少しレトロなものを使って、ぱっと昔の記憶を思い出してくれたらいいなと。古いミシンなんかを置いたりして、『YAMAYA』で過ごしたことで、いろいろな思い出がよみがえるような、そんな場所にできたらいいなと考えています」とケン。

ゲストハウスに加え、徒歩10分ほどの場所にアウトドア体験ができるベースキャンプがあり、さらに、グランピングの施設も準備予定だ。現在、デザインはできていて、五右衛門風呂を作ろうと画策中。薪を割るところから体験してもらうツアーを計画中で、1日1組限定での利用を考えている。

しかし、もう1年以上、外国から訪れるお客はほとんどなく、この素晴らしい宿での体験をしてもらえないのが残念で仕方ない。ケンも、自身のアンテナをチューニングする機会が減り、とまどっている。

「でも、東京や大阪で同じことをしても楽しくないと思うんです。山城という場所に、非日常を求めてやってくる人がいて、そういう人たちと接することができるから楽しい。山城だからできることがあって、でも、一度だけで終わりにするのは嫌。自分だからこそできること、誰にもできないことがしたい」とケン。

海外からの来訪者が減っているとはいえ、過去の宿泊客とはSNSなどを通じて、やりとりが続いている。また、利用者のレビュー(評価が高い)を見て、いつか訪れたいと思っている人々が世界中にいるはずだ。明けない夜がないように、コロナ禍もいつかは収束する。その時のために、ケンは少しずつ準備を進めている。

「オヤジと話していたのは、ほっと落ち着ける場所にしたいねって。今は、スマホやPCが発達して、どこでもいろいろな情報が手に入るようになった。でも、そのせいで失ってしまったものもある。そういったものを、ここでなら感じることができて、思い出してもらえたらいいなと思っています」とケンは言う。

たとえば、余った夕飯を近所におすそ分けするような関係、あるいは、親だけでなく地域ぐるみで子供を育てるようなコミュニティ、そうした温かい人と人のつながりは、とくに都市部では失われてしまった。それはきっと、日本もそれ以外の国でも同じようなものなのだろう。だから、『YAMAYA』を訪れた人は、ときに懐かしい思い出がよぎったり、心が温まったりするのだろう。

『YAMAYA』に、多くの笑顔が咲く日はきっと遠くない。

 

YAMAYA

Webサイト:https://www.kominkayamaya.com/

大野 健(YAMAYA)

facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100013337920634