故郷の「人」を撮る。写真家|日浦嘉孝さん

故郷の「人」を撮る。写真家|日浦嘉孝さん

「そこに暮らす人々の日常の活動やモノの考え方」を写真で伝える日浦嘉孝さん。徳島県三好市を含む西阿波に暮らす人々や、秘境祖谷に暮らす人々の風俗や文化を15年に渡り撮り続けている。昨年6月、撮りためた写真から約90点を選び、初の写真集となる「西阿波・祖谷 傾斜地に暮らす 土と緑と人間と」を出版した。

春から始まり、また春へと戻る季節ごとの暮らしと人々の営みが収められている。中には時代の流れで途絶えてしまった祭りや風習などの貴重な写真も収められ、西阿波・祖谷の人々特有の暮らしを知ることができる。

 

日浦さんが撮る写真には「人」が写っているものが多い。人間社会や歴史が好きだという日浦さんのこだわりだ。

現在は、自宅の香川県丸亀市と実家のある池田町を往来し、西阿波の暮らしを撮影している。2月2日節分の日、三好市井川町に昔から伝わる風習「目突ヒバ(”焼き差し”ともいう)」を撮影に行くというので同行させていただいた。迎えてくれたのは「日浦さんには、昨年の12月にもこんにゃく作りを撮ってもらったのよ。」という言う阿佐さんご夫婦。

 

日浦さん自身が「地域の人が対等に接してくれるのが嬉しかった。いろんな人に助けていただいたからこそ撮れた写真。」と語るように地域の方の理解と協力が無ければ、15年間にも渡り人々の暮らしを撮り続けるということはできなかっただろう。

会話をしながら自然とシャッターを押す彼の姿を見て、生活の一部を切り取ったような写真が撮影できるのも頷ける。撮影後はお茶を頂きながら談笑し、会話をしながら情報を得て、次の撮影のイメージを膨らます。

西阿波(美馬市、三好市、つるぎ町、東みよし町)の人々は、大差なく皆フレンドリーだという日浦さん。田舎ならではの口コミ情報で、次から次へと被写体となる情報が得られているようだ。

今回撮影に同行させていただいた「目突ヒバ(”焼き差し”ともいう)」も含め、写真撮影を通して途絶え行く文化や風習の数々をこれまでに見てきた日浦さんに、今現在の思いを聞いてみた。

「郷愁と時代の流れで納得する面、相反することで複雑です。」と語る。

帰り道、「大根を撮る」と言って車を止め、軒先の大根に向けシャッターを切る日浦さん。

(住人の方に写真に写ってと誘うが遠慮される様子。)

「人が写っていればもっといいのになぁ」とつぶやく言葉を聞いて、暮らしの中にある何気ない風景を撮り続けたいという、日浦さんの強いこだわりを垣間見た。コロナウィルスの影響により東京で予定していた写真展が開催できなくなったが、今後は写真展なども通してここならではの暮らしの風景を伝えていきたいと語る。

「目突ヒバ(”焼き差し”ともいう)」:鰯の頭、柊の葉、柚子の皮を枝に差し、玄関などに飾る。鬼を追い払う効果があると伝わる。

写真集『土と緑と人間と西阿波・祖谷 傾斜地に暮らす』

『土と緑と人間と西阿波・祖谷 傾斜地に暮らす』
著:日浦嘉孝  発行:株式会社 日本写真企画
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