美しい自然と受け継がれた伝統。プライベート体験ツアーを通したコミュニケーション。古民家宿 蔵谷/主人 国金重光さん 第1話(全2話)

2020.11.30

三好人

第1話(全2話)

古民家宿 蔵谷/主人 国金重光さん

美しい自然と受け継がれた伝統。プライベート体験ツアーを通したコミュニケーション。

 

今夜から2泊3日で宿泊する外国からのお客さまを高松空港までお迎えの車をとばす。「ほとんどの方は旅のプランを立てずに来られるんです」と話す国金重光さん。三好市池田町州津にある古民家宿蔵谷の主人だ。「三好市の山岳地域にはたくさんの集落がありますが、観光客がその暮らしぶりや日々の行いを体験するということはなかなかできません。外国人の方は特にそうなのですが、日本人の伝統的な暮らしに大変興味があります。僕は彼らのリクエストを聞き、地域コーディネーターとなっていろいろなところへ連れていってあげるんです。」

日本の原風景が残る大歩危・祖谷地域。険しい山々と深い渓谷が織りなす斜面には、民家と畑が張り付くように立地していて、世界でも珍しい独特の景観を創り上げている。細く、曲がりくねった山道を抜けて辿り着く高地傾斜地集落の文化的背景や、風土、暮らしを感じ、体験できることはとても豊かなことだ。「宿泊客のリクエストを伺って、これから東祖谷へ行って蕎麦打ち体験をしてお昼をいただき、そのあと、山城でお茶摘み体験をして宿まで戻るプランを提案しました。その行程の中で景観の良いところへも立ち寄ったりもする予定です」と話す国金さん。

そば打ち体験では、東祖谷の奥の方へ訪ねて、地域に伝わる貴重な在来種、祖谷蕎麦について学ぶ。無農薬栽培、天日干し、丁寧な自家製粉。美味い蕎麦の秘密を伺いながら、自分で蕎麦を打ち、囲炉裏をみんなで囲むという時間を楽しめる。

お茶摘み体験では、山城の標高600Mの急斜面に広がる茶畑へ向かう。昼夜の寒暖差がお茶の色と香りを生み出す。見晴らしの良い場所で、自分で収穫した茶の葉をかまどの火で煎って飲む“煎り番茶”は格別だろう。

宿泊客は雪の降る東祖谷の景色にも圧倒されていた。季節を変えてまた来てくれそうな予感がする。

ほんとうに国金さんはフットワークが軽く、そしていろいろな集落の方と仲が良い。たくさんのひとと繋がり、そのなかで自身が多くを学ぼうとされている。どの集落へ行っても、話しが弾んでみんなニコニコとしている様子をみると、とても良い関係を築かれているんだなあと感じる。

「地域の中に入ってその土地やひとを知ることは、とても大事なプロセスだと思うんです」と話す国金さん。宿の主人でもあるが、実は地域コーディネーターとして学生向けのフィールドワークも積極的に企画されている。「若い世代にも地域に入ってもらい、もの/ことづくりの根っこをみつけてもらいたい」と地域や未来を担う若い世代への思いを話してくれた。

第二話では学生へ向けたフィールドワークの活動について伺う。

 

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古民家宿 蔵谷は、築100年の造り酒屋の古民家を改築した。お部屋の内装は当時のまま。古き良き日本家屋の雰囲気がとても気持ちいいお宿だ。

 

第2話へつづく。   (取材・文/横山道雄 写真/佐藤全俊)

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