徳島県三好市 奥祖谷で受け継がれる幻の年越しそばとは? パート2
2022.12.26
大晦日に縁起をかついで食べる年越しそば。
そばは他のめん類よりも切れやすいため、年越しそばには「一年間の苦労や災厄を断ち切る」という願いが込められているともいう。
日本三大秘境のひとつ、かずら橋や伝統的集落の点在する、徳島県三好市祖谷地方。ここはまた、昔から名だたるそばの里でもある。その祖谷そばの里で行う、地域コミュニティによる年越しそばづくりを紹介する。
【前回の記事はこちら】
徳島県三好市 奥祖谷で受け継がれる幻の年越しそばとは? パート1
ひっそりとした冬の秘境 祖谷での年越しそばづくり当日
年の瀬迫る12月29日。年越しそばづくりも佳境になった「久保満月会」を訪ねて、三好市東祖谷久保地区へうかがった。
数日前の寒波で降った雪がまだ畑を覆っている。雪景色の中、そばづくりの作業をする建物から湯気が上がっているのが見えた。
「久保満月会」の年越しそばづくりでは、保存料や添加物は使用せず、冷凍保存もしない。祖谷のそば粉を使った、本物の贅沢なそばだ。
作りたてそのままの祖谷そばを届けるために、ここでは年の瀬に、そば打ち、茹で、箱詰めと三つの建物で分かれて、忙しく作業が行われている。
地元産のそば粉と祖谷の澄み切った水で作る 本物の手打ち祖谷そば
はじめにそば打ちの建物へ向かった。
戸を開くとそこでは地域の方々7人ほどが製麺を手分けして行っていた。力のいる作業が多いためか、男性が多い。
はじめに300kgのそばから製粉されたという、大量のそば粉が手作業でふるいにかけられる。
そこに山からの清らかな湧き水を加え、そばの生地を作っていく。
三好市祖谷の地域住民が熟練の技で作り出す 祖谷のソウルフードそば
生地を作るのは重労働。しかし、祖谷の女性もたくましく、慣れた手つきでこね、あっという間に粉と水から、丸い生地の玉に仕上げていく。
丸くまとめられた生地は、そばを伸ばす担当の3名へ。三つの大きなそば打ち台が並び、そこで、麺棒を使って、生地がどんどん伸ばされていく。生地は大きく、重く、そば打ち台に当たるたびに大きな音がする。これも力の必要な大仕事だ。
きれいな円形を保ったまま、そばの生地はどんどん薄く延ばされ、最後は折りたたまれて、いよいよそば切りの担当へ渡される。
とてもスムーズに見えるのだが、地元の方々の熟練した技術があってこそ、このようにそば打ちがどんどん進んでいくのだろう。
手早くかつ均等に…そば切りの音が響く
そして、ちょうどよい厚さに延ばされた生地が、そば切りの作業台へ運ばれ、そこで切られて麺の形となっていく。
そば切りは、専用のそば切り包丁が固定された台で行われるが、包丁を動かして切っていくのは全て人の手で行われている。そば切りの音もリズミカルに響きわたっている。
ここでは、贅沢な年越しそば、祖谷育ちの本物の手打ちそばが作られている。
パート3では、つづいて年越しそばの出荷までを紹介する。
【次の記事はこちら】
徳島県三好市 奥祖谷で受け継がれる幻の年越しそばとは? パート3
祖谷そばが食べられるお店
旅の宿 奥祖谷
https://www.okuiya.jp/
峡谷の隠れ宿 祖谷美人
https://iyabijin.jp/
(取材・文: ショーン ラムジー)
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武家屋敷旧喜多家
宝暦13年(約250年前)に建てられた祖谷地方でも最も大きな武家屋敷。屋島の戦に敗れた平氏一族が落ちのびてきた東祖谷山村大枝地区は、平家縁の地である。
この平家の里の名主であった「喜多家」は、祖谷の上層階級の武家屋敷である。庭先には「鉾杉」もあり一見の価値有り。 -
東祖谷歴史民俗資料館
"平家落人の里”として伝説が今も息づく祖谷地方。平清盛が生きた時代や源平合戦など正史を取り上げながら、『平家物語』と「祖谷平家伝説」の関わりを紹介し、伝説ゆかりの場所を写真パネル等で取り上げています。
また、東祖谷は深奥の秘境であり、全ての始まりの地でもあったことから、独自の文化・風習・慣習が育まれました。資料館では、四季を通じた東祖谷の姿、時代の変化に伴う日常道具の変遷、生活を潤す芸術品など、村民が大切に残した時代の形をご覧ください。
2階には500名収容のホールもかねそなえています。 -
落合集落(国選定重要伝統的建造物群保存地区)
落合集落は、東祖谷のほぼ中央、祖谷川と落合川の合流点より山の斜面にそって広がる集落である。集落の起源は明らかになっていないが、平家の落人伝説や開拓伝承などが祖谷地方には残っている。集落内の高低差は約390mにも及び急傾斜地に集落を形成している。
江戸中期から昭和初期に建てられた民家や、一つひとつ積み上げた石垣と畑などの光景は、なつかしい山村の原風景を醸し出している。
平成17年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。
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