四国のほぼ中央に位置する秘境エリア『祖谷』での追い山猟 | vol. 3
2021.03.05
「祖谷の地美栄(ジビエ)」 四国の山々からの味
「ジビエ」の語源はフランス語からきているが、今では日本でも野生の狩猟肉をよぶ一般的な言葉として使われており、ここ数年で、祖谷のジビエは本物の味を求める美食愛好家の間で評判が高まってきている。
今回は食の面から「追い山猟」を紹介しよう。
三好市東祖谷にはジビエ肉を取り扱う施設がある。2014年に東祖谷猟友会が中心となった三好市鳥獣被害防止対策協議会によって、「祖谷の地美栄」、ジビエ専用の食肉処理加工施設は開業された。
増加する野生動物の個体数を抑制するため、それを行う地元の猟師を支援するため、そしてその動物の命をできるだけ無駄にしない様に、加工・販売できる場所として大事な役割を果たしている。
「祖谷の地美栄」にうかがい、工場長の高橋敬四郎さんに施設を案内してもらった。高橋さんは長い間、料理人として勤めてこられたそうだが、当初このような狩猟肉を処理・加工するような業務は初めてだったとの事。施設を運営するにあたり、複数の他県のジビエの施設に出向いて狩猟肉の処理・加工や工場の運営などについて学ばれたそうだ。
施設では、高橋さんと数人のスタッフで祖谷の猟師達が運んでくるイノシシや鹿を処理・加工している。イノシシや鹿は、衛生的な施設の中で部位別にカット・パッキングされ、全国のレストランやホテル、個人の方に、直接またはオンラインで販売している。
この施設では衛生面には細心の注意が払われており、品質管理を徹底することにより、農林水産省から全国で2番目に「国産ジビエ認証」施設としての認証を受けている。
高橋さんはまた、猟師の方々との連携についても語ってくれた。
「一番大変なのは、肉をどこまで新鮮な状態に保てるかということです。施設内での処理や加工だけではなく、野生動物の捕獲からこの施設への搬入は1時間以内という厳しい基準も猟師の皆さんに守っていただいています。大変難しいと思いますが、皆さんに理解、協力してもらっています」
また、高品質なジビエ肉は、人気のヒレ・ロース・モモに限らず、ソーセージやメンチカツ、ハムなど、様々な形で楽しんでもらえるように商品開発もされているそうだ。高橋さんはジビエに関わる以前から、長年、ソーセージ作りのワークショップなども行ってきており、その経験も生かされている。
秘境の味
地元の猟師、堂前さんの作業場の屋外でバーベキューが行われていたので。追い山猟を語ってもらいながら一緒にグリルを囲ませていただいた。
「祖谷の地美栄」の大ぶりなソーセージもよく焼けて、音をたててはじけている。脂ののったおいしそうな匂いがあふれてくる。その匂いが届いているからだろうか、少し離れたところにいる堂前さんの猟犬達も吠えている。
作業場にいつもいる猟犬マルは、肉が欲しそうな顔でずっとグリルのそばに座っていた。
堂前さんはイノシシのソーセージを一口食べて「祖谷のソーセージは初めて食べたけれど、サラミのようでこれもおいしい。もっと、みんな、山の肉を食べてみたらいいのに」と語ってくれた。
地元の猟師の人々は普段は鍋や焼き肉でジビエ肉を食べることがほとんどだそうだ。
秘境を味わう
- 茅葺き屋根の古民家宿「紺屋」では、シシ鍋を味わうことができる。また希望すれば準備から囲炉裏での調理まで一緒に体験することも可能。(要予約)
- 東祖谷 「旅の宿 奥祖谷ホテル」では、予約なしでもランチのジビエ料理を味わうことができる。鹿カレーやセットなどがメニュー化されている。ホテル宿泊者には牡丹鍋など特別なジビエ料理も予約可能だ。
- 祖谷渓 「ホテル祖谷温泉」レストラン「HANA」では、祖谷の地美栄の鹿肉が特製ランチに使用されている。
- 三好市の中心地 JR阿波池田駅近く 「ヘソサロン」のランチでは祖谷のジビエを使用した多国籍なメニュー、ディナーでは鹿・イノシシともにワインや地ビールと合うようなおつまみからメインディッシュまで幅広いメニューを展開している。
- 自分でジビエを料理されたい方も、「祖谷の地美栄」ウェブサイトからオンラインで注文することができる。
祖谷のジビエを通して、秘境の追い山猟に思いを巡らせてみるのはいかがだろうか。
(取材・文: ショーン ラムジー)
三好市公式観光サイト【大歩危祖谷ナビ】
https://miyoshi-tourism.jp/
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