「干しいも。家族で受け継ぐ農業」山下農園 六代目 山下圭一郎さん
2020.12.31
急峻な傾斜地に沿って続く、細い曲がりくねった山道。カメラマンとふたりで道幅を気にしながらゆっくりと車を走らす。吉野川を挟んで遠くに見えるのは腕山(かいなやま)だ。山下農園へ向かう途中、のんきに景色を楽しんでいたおかげでどうやら道に迷ってしまった。
「わかった!迎えに行くわー!」と電話口の向こうで笑っているのは山下圭一郎さんだ。
確認すると1本下の道へ入ってしまったようだった。迎えに行くと言ってくれたが、話しているうちに彼の待つ山下農園へたどり着くことができた。
四国初の世界農業遺産に認定。急傾斜地農耕システム
山下農園は徳島県三好市池田町の山間地域(標高約500m)にある。2018年、山間部で継承されてきた急傾斜地での農耕システムが認められ、四国ではじめて世界農業遺産(GIAHS)に認定された場所だ。
代々この地域で農業を営み、干しいもやトマトなどを中心にどれも美味しい人気商品となっている。
彼に会うのはちょうど2年ぶりくらいになるが、その頃はまだ市内の会社に勤めていて、農業をするなんて思ってもいなかった。一念発起し家業を継ぐことを決意したのはちょうど1年前だという。現在は両親とともに家族で農園を営んでいる。
「今日、ちょうど芋干したとこやけん見てく?」ビニールハウスにお邪魔すると、芋が干されていて、ちょうどご家族で作業されていた。
山下さんの干し芋は“ひめあやか”という品種で作られている。肉質はやや粘質で食感はしっとりとしており、すじっぽさもない。10月中旬頃に収穫し、土つきのまま1ヶ月程倉庫で自然乾燥される。乾いたいもを水で洗い、大きな釜でゆであげ皮をむく。ここから芋を切るのだが、山下農園では切り方に工夫を凝らしている。大きさのムラや切り落としのロスが出ないようなかたちになっていて、尚且つそれは食べやすさにも繋がっている。このあと天日干しされるのだが、乾き方も均質になりそうだ。
「父には段取りや作業効率について厳しく教えられた」と山下さん。
苗植えや収穫のタイミング、芋の乾燥の具合、山でクヌギの木を切り、その薪で芋をゆでる。天日で干し、山からの風で乾かす。陽が差すことも大事だが雨も無くてはならない。自然は気まぐれなのだが、その自然のサイクルを常に見つめ、豊かな恩恵が受けられるように準備を怠らないようにする。山下さんが教わったことはそういった心構えのようなものを示してくれているように思う。
車で芋畑まで連れて行ってくれた。この冬の間にも畑を1〜2度掘り返さないといけないという。やりがいや楽しみを聞くと、「もう毎日がたいへん!覚えることも多いし。他の野菜もチャレンジしとんやけど、全然手まわらん(笑)。毎日忙しいけど、まあでも代々受け継いできたこの土地で、家族と農業ができるっていうのは楽しいかな」と笑顔で返してくれた。
山下農園
FaceBook:https://www.facebook.com/keiichiro.sun
(取材・文・写真/横山道雄)
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